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サムライはイスラエルのリアルサバゲーに向かう。

2014年03月05日 07時23分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

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 2014年3月3日に発表されたサムライインキュベートのプレスリリースによるとサムライインキュベートの代表取締役、榊原健太郎氏がイスラエルはテルアビブに設置されるサムライインキュベートの拠点に自身が赴き、率先してイスラエルのベンチャーと日本企業を結びつける仕事を始めるようだ。

 国内のベンチャーを支援してきたサムライインキュベートにしてみれば、矛先を国内からイスラエルに変えたと見えないこともない。発表に先駆けて榊原氏にインタビューを行った。そこでイスラエルに賭ける期待や競争の激しさ、イスラエルの実情などを赤裸々に語ってくれた。

イスラエル外務省でプレゼンを行う榊原氏。

イスラエル外務省でプレゼンを行う榊原氏。

 「実際にこれはリアルサバゲーですよ(笑)。つまり韓国や中国が先を争ってイスラエルのベンチャーを喰おうとしている。その前に日本の我々が喰うのか、喰われるのか、リアルなサバイバルゲームです。そのゲームに勝つために本腰を入れて向き合う。だから私が行くんです。英語なんてロクに出来ないのに(笑)」。榊原氏は笑いながら語る。

 この発表の直後の3月4日にホテルオークラにて開催された「スタートアップ・ネーション イスラエル2014」でもイスラエルのベンチャーキャピタル10社が来日し、広い宴会場を埋めた150名を超える参加者に向けて「さぁ、イスラエルに投資しよう!」というイベントが開催され、その中で行われたパネルディスカッションでもこのサムライインキュベートのイスラエル進出が話題になったところだ。

 2月半ばに現地イスラエルに視察に行った時のエピソードを含めて榊原氏に今回の意気込みを聞いた。「イスラエルが危ないというのはかなり誇張されている気がします。今回、テルアビブに行ったんですが、もう紛争自体が管理されているんですよ。一日前にはどこにミサイルが飛んでくるのか、分かっている。日本における地震と同じ感じです。ある程度、管理出来るリスクという感じ。それくらい極々普通の状況です。」

 そして今回の出張で驚いたことがあると語る。「今回日本からは私を入れて20名程度で視察に行ったんですが、向こうの日本大使館の人が『日本から20人も来てくれた!』と驚いていたんです。でもいつも私がサムライでやっているイベントなんて100名単位で人が来てくれるので、たった20名でそんなに喜んでくれることに逆に驚きました。しかも我々20名の相手をしてくれるイスラエル側はインテル・イスラエルの社長とか錚々たるメンバーなんですよ。それに引き換え「じゃぁ、日本からも自己紹介しましょう!」と呼び掛けても誰もしない。しょうがないから私が英語で自己紹介して、『私がイスラエルに来てビジネスをやります!』って言ったら拍手喝采ですよ。今は日本からの直行便が無いんですが、向こうに行く日本人を増やして直行便を作らないといけないと思いました。年間5万人旅行者が居れば直行便は作れるそうなんで、それを目指します(笑)。」

 実際にイスラエルに拠点を構える目的は何だろう?「具体的には、日本の投資家や大企業とイスラエルのベンチャーを繋げる仕事をします。単に社員を送るだけじゃなくて「日本からベンチャーキャピタルの社長が来たぞ!」って聞いたら向こうの人もビビると思うんですよ。それくらいの気合いで。実際にWazeの買収を仕掛けたVCの人とも仲が良いですし、やっぱりVCや企業のトップはコネで繋がっている部分が大きいので、私が行かないとマズいよねと。色んな人から紹介して貰えば、かなり関係も拡がるんですよ。イスラエルではシリコンバレーで誰かに紹介して貰うよりも遥かに速く確実に関係を作ることが出来ます。そのキモはイスラエルの兵役制度じゃないかと思います。」

 イスラエル発のベンチャーの大元をたどると創業者が同じ部隊で兵役に就いていたことがままあるという。3月4日のイベントでもかつてイスラエルの8200部隊に所属していたベンチャーキャピタリストがその経験と利点について語る一幕もあり、イスラエルにおける人材育成の大きな要因となっているようだ。

 榊原氏は更に目的について語る。「もう一つの目的は日本のベンチャーをイスラエルに連れて行って向こうのエンジニアと組み合わせてチームを作り、それで開発を加速させる、みたいなやり方です。イスラエルの人は技術開発は得意なんですが、マーケティングがあまり上手くないのでその辺を英語が喋れる日本のベンチャーと組み合わせられたら面白いことが出来そうな気がします。まずはそういう人たちを連れて行こうかと。とりあえず向こうに行ってVCに挨拶回り終わったらお披露目のイベントやりますけど。」

 イスラエルとのビジネスに向いているのはどんな人だろうか。「イスラエルはいつも交戦状態といういわゆる極限状態なので、物事の本質を理解出来る人でないとダメな気がします。戦争してるから~とか危ないから~とかそういう理由を付けてやらない理由を探すよりはまず動いてみることが出来る人、本質を見抜ける人なら大丈夫な気がします。」

 イスラエルでの生活面での不安は無いのだろうか。「テルアビブは本当に普通の街なので、生きていくには問題無さそうです。ちなみにアメリカよりも魚料理とパスタが多くて安心しました。ちょっとだけ物価は高いですけど(笑)。こんなに英語が出来ない人間でもイスラエルに行って仕事が出来るんだから、皆さんにも是非チャレンジして欲しい。サムライインキュベートを踏み台にしてどんどん世界に挑戦して貰いたいのです。」と締めくくった。

今年の後半、イスラエルでサムライが大暴れしそうだ。引き続き注目したい。

参考リンク:http://diamond.jp/articles/-/49484

イスラエル大使館経済部:http://itrade.gov.il/japan/

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