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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第97回

FirefoxにUbuntu、“ギークな”スマホメーカーGeeksphoneに接近

2014年03月05日 19時00分更新

文● 末岡洋子

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 スペインのスマホメーカーであるGeeksphone……と聞いてもご存じない方がほとんどかもしれない。Geeksphoneを知るきっかけとなったのは、Mozillaの「Firefox OS」である。Geeksphoneは“初のFirefox OSスマートフォン”を開発者向けとしてリリースしたメーカーだ。

 「Mobile World Congress 2014」では米Silent Circleと共同で開発した、プライバシー重視のスマートフォン「Blackphone」を正式発表して、メディアの関心を集めた(関連記事)。これまでなかなか知る機会がなかったGeeksphoneチームにMWCで時間をもらい、同社についていろいろと教えてもらった。

MWCで発表されたBlackphone

始まりはAndroid
実は欧州第1号のAndroidメーカー

 Geeksphoneはスペイン・マドリッドを拠点とする小さなベンチャー企業だ。メディア業界出身のRodrigo Silva-Ramos氏がAndroidのことを知り、なんとか端末が手に入らないのかと探したことからはじまる。だが当時、Androidはスペインはおろか欧州でも手に入らない。そこで携帯電話ハードウェア通のJavier Aguera氏に声をかけた……「一緒にAndroidスマートフォンを作らないか」と。Aguera氏は開発を進め、中国に行って製造パートナーを探した。そうやって2009年にAndroidスマートフォン「One」が完成する。

 Oneはスペインでは初の商用Androidスマートフォン、欧州でもSIMフリーのAndroidとしては最初だったのだという。

現在、Silva-Ramos氏(左)はGeeksphoneの共同創業者兼CEO、Aguera氏(右)は共同創業者兼COOを務めている。

 Geeksphoneはその後に2機種目のAndroidスマホ「Zero」を投入しているが、同社の知名度を一気に上げたのが2013年1月に発表した「Keon」と「Peak」だろう。

 ちょうどMozillaが、それまで「B2G(Boot to Gecko)」として進めていたモバイルOSプロジェクトを大々的に発表した頃だ。1GHzシングルコアチップを搭載し画面が3.5型HVGAのKeon、1.2GHz動作のデュアルコアに4.3型qHDディスプレーなどKeonよりスペックが上がったPeakは、ともに「開発者向けプレビュー」と位置づけられ、Geeksphoneのサイトで販売した。

アキバのショップにまでやってきていた「Keon」

 価格はKeonが119ドル、Peakが194ドル。販売台数は明かしていないが最初に用意していたのは1000台、これはすぐに完売となった。合計で数千台といったところのようだ。(KeonとPeakは現在販売していない)

 MozillaのスマートフォンOSへの関心の高まりとともに、4月に発売開始したKeonとPeakは注目を集めた。結果的にGeeksphoneの知名度はぐっと上がった。同社はその後「Peak+」を発表。こちらは「コンシューマー向け」としており4.3型qHDディスプレー、1.2GHzのデュアルコアCPU、8メガピクセルカメラなどを特徴としていた。だが、Peak+はいくつかの問題により、発売には至らなかった。

Geeksphoneの端末が 「Firefox OS」スマホではない理由

 そのGeeksphoneがさらにステップアップしたのが1月のBlackphone発表だ。PGP暗号化技術を考案したPhil Zimmermann氏らのSilent Circleと、暗号化通信によるプライバシー重視、セキュリティ重視のスマートフォンを開発するにあたって手を組むことになった。

 実現に向けて米国のSilent CircleとスペインのGeeksphoneの2社は、スイスにBlackphoneという合弁会社を立ち上げ、ビジネスを軌道に乗せていく。Puron氏はGeeksphoneからBlackphoneに移り、立ち上げを手伝う。

 Blackphoneの中味はというと、Androidを土台にSilent Circleが現在有料アプリとして提供しているプライバシー/セキュリティー機能を入れてカスタマイズしたもので、先週のMWCで正式発表となり予約受付を開始した。だがまだスペックは最終的なものではないとのことでアバウトな感じもする。ただBlackphoneはニッチながらニーズはあるように見えるので、Peak+のように流れてしまうことはないような気がする。会期中、Blackphoneは話題の1つだったし、ブースでは商談もいくつかあったと聞いている。

 話をMozillaに戻そう。実は、これまでGeeksphoneの端末を紹介するのに「Firefox OSスマートフォン」という言葉を使っていないのに気がつかれただろうか?

 Mozilla側での流れを見ていくと、「Firefox OSローンチ」を2013年2月のMWCで正式発表。ここで初の「Firefox OS」ベースとしてZTEの「ZTE Open」が発表された。ただ、MozillaはPeakもKeonも“Firefox OSスマートフォン”とは扱っていない。Geeksphoneもこれを認めており、同じ技術を使っているが「Firefox OSスマートフォンの認定を受けていない」とPuron氏は説明する。

 Mozilla側に聞いて見ると、やはりこれを認め、現在Firefox OSスマートフォンの認定を体系化しているところだという。ZTE、Alcatel One、LG、そしてHuaweiが“Firefox OSスマートフォン”と名乗ることができ、最初に端末を作ったGeeksphoneが名乗れないのはちょっと変な気もするが、ではGeeksphoneは何なのか? Puron氏によると、PeakとKeonは「Boot to Gecko(B2G)」(Firefox OSという名称ができる前のプロジェクト名)スマートフォンということだそう。とはいえ、もちろんFirefox OSと同じものだ。

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