技術的には昔と大差なし
そこに登場したボーズの新製品群、SoundTouch。従来からあるCD/FM/AMラジオレシーバーにWi-Fi機能を持たせた「Wave SoundTouch music system」がオンラインストアと直営店で絶賛発売中。新設計のパワードスピーカー「Bose SoundTouch 30 Wi-Fi music system」「Bose SoundTouch 20 Wi-Fi music system」「Bose SoundTouch Portable Wi-Fi music system」が3月14日に発売予定。いずれもAirPlay対応で、iOS機器やiTunesをインストールしたパソコンから直接接続して再生ができるようになっています(SoundTouchシリーズの詳細はこちら)。
ネットワーク・オーディオとしてのソースは、LANに接続されたパソコンのオーディオファイル、そして本体のみでインターネットラジオの再生に対応します。それを無償提供されるアプリ「SoundTouch app」をインストールしたWindows、Mac OS X、Android、iOSの対応機からアクセスして操作します。
技術的にはDLNAをベースにしているので、昔からあるネットワーク・オーディオ機器と大きく変わりはありません。ですが、今ならその利便性が分かりやすい。スマホ用のワイヤレススピーカーのつもりで買っても、LANにつながる家の中でなら再生するファイルの置き場所が違うだけで、同じように使える。それでメリットが十分伝わるわけです。つまり昔と今の違いは、スマホとワイヤレスオーディオが一般化した時代背景だけと言えます。
クラウド型コンテンツとネットワーク・オーディオ
気になる部分もあります。我々が使うパソコンのストレージもHDDからSSDになって薄く軽くなった代わりに、以前より慎ましい容量で運用するようになりました。だからNASを用意する必然性は以前より高まっているとも言え、それが今こそネットワーク・オーディオの時代だ、ということにもつながっていくのでしょう。パソコンが起動していなくても再生できるNASはやっぱり便利です。
ただ、これは私がそうなのですが、ファイルをローカルに保存して再生するという操作は、特別な場合を除いてもう面倒になってきています。なぜなら、各種SNSに貼られたリンクからYouTubeなどを観る方が忙しいから。つまりクラウド上のコンテンツにアクセスする頻度の方が高い。この場合、LAN内の機器に保存されたファイルの再生を前提とするネットワーク・オーディオに出番はありません。
先のボーズの製品であれば、AirPlay接続に切り替えてYouTubeの音声を聴くことも可能ですが、そうなると別にネットワーク・オーディオなんかいらないじゃないか、Bluetoothでいいじゃん、電話もできるし、という話になってくる。そこをどうするのかなと考えます。
もうひとつ心配なのは、ネットワーク・オーディオが無事ランチアップしたとして、こうした製品に対して私的録音補償金をせしめようとする団体さんが、また張り切り始めたりしないかということです。こちらの方も、なにとぞお手柔らかに。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。