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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第242回

Maxwellで読めてきた、20nmへ移行するNVIDIAロードマップ

2014年03月03日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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今後は20nmに移行するも
GDDR5がボトルネックに

 ここからは今後の展開だ。まず簡単にまとめてしまえば以下のようになる模様だ。

  • 28nm世代ではもう1つ、GM108というコアが登場する。こちらはKeplerベースの「GeForce GTX 640」以下の製品の代替となる。
  • 20nm世代ではGM200/GM204/GM206の3つのコアが予定されている。ただし登場時期は今年後半~来年以降になる。

 まずメインストリーム~エントリーレベル向けとして用意されるGM108は、「GeForce GTX 645」や「GeForce GTX 650」あたりから、OEM向けにGeForce GTシリーズ向けとなる製品である。こちらは現状Kepler 1.0と2.0が混在しているが、これをGM108で置き換えてゆく見込みだ。

 この市場は一部GeForce GTX 750などとも絡むが、統合グラフィックの置き換えが主な狙いだ。ところがAMDがKaveriベースのAPUをリリースしたことで、確実に性能の底上げが行なわれた。これに対抗するためにはNVIIDIAとしてもやはり性能の底上げが必要であり、さらに主なターゲットがスモールPCなので省電力性が求められる。

 こうした目的にはMaxwellのアーキテクチャーは適している。したがってメインストリームに先駆けてMaxwellを投入するのは理にかなっている。そもそもGM107にしてからがそうした目的で投入されているわけで、まずはローエンドを固めよう、という方針は非常に正しいと思う。

 そのGM108はGM107よりやや遅れて4月頃の投入になるらしい。ちなみにラインナップは正直さっぱり情報が出てこない。どのみちこのクラスになると細かくスペックを変えて複数種類をリリースするのは目に見えているからだ。ロードマップの図にはフル構成の例を示したが、この構成で製品が本当に出てくるかどうかはよくわからない。

2012~2014年のNVIDIAロードマップ

 さて、Maxwell 1.0と図に示したがTSMCの28nm HPMプロセスを使ったMaxwellはこのGM107/GM108で打ち止めだ。この先はTSMCの20nm SoCプロセスを使ったものになる。

 TSMCの20nmそのものは順調であるが、現状はまだリスクプロダクション(危険を冒してでも量産を急ぐこと)がまもなく終わるという時期で、すでにXilinxをはじめとする何社かがシリコンを入手しているものの、まだ社内検証の段階でOEM向けにエンジニアリングサンプルを出せる状況ではない。

 ES品を出せるようになるのは早くて今年第2四半期以降で、量産品が出てくるのは第3四半期に入ってからと予定されている。しかもTSMCの20nmは、まだ生産能力がそれほど多くない。この状況で複数のデザインを同時に流すと、予想外に時間がかかることも考えられる。

 加えて言うと、28nm→20nmの移行でメリットがあるのは、ある程度ダイサイズの大きな製品に限られる。GM107クラスでは28nmプロセスで156mm2なので、GM108では110~120mm2であろう。これを半分にすると100mm2を切ってしまうのだが、そうなると今度はPAD(外部に配線を引き出す部分)が十分にとりにくくなる。

「GeForce GTX 750 Ti」のダイサイズは156平方mm

 これがもう少し上のグレードになると、例えばGK104が294mm2だったのが、構成を変えなければ150mm2前後になるわけで、実際は200mm2超というあたりに狙いを定め、その分シェーダーを増やすという形で性能を改善できるため、プロセスの移行は大きなメリットになる。

 以上のことから、おそらくGK104の後継となるGM204が、早ければ6月くらいに登場すると思われる。ただこのGM204で問題なのはメモリー周り。NVIDIAはMaxwellの次になるVolta世代でStacked DRAMを搭載することを明らかにしているが、つまりMaxwellの世代は既存のGDDR5で頑張るしかない。

 結果として、GM204はGeForce GTX Titan Blackとほぼ同様のメモリー構成になると思われるし、逆に言えばこれがボトルネックになるから無闇やたらとシェーダー数を増やしても意味がない。むしろGM204のメリットは、GM107と同じように省電力が売りになると思われる。

 GK104-A2コアを使う「GeForce GTX 770」のTDPは230Wとなっているが、これが半分とは言わなくても150W前後まで落ちれば、少なくとも8ピンの補助電源コネクターが要らなくなり、構成次第では6ピン×1の構成すら実現できるかもしれない。

 現状伝わっている話を聞く限り、TSMCの20nm SoCはそれほど省電力にならない(28HPMと大差ない)という話であるが、Maxwellアーキテクチャーで本当に消費電力が下がるならば、これは射程範囲に入りそうだ。したがって、GM204は比較的穏当な構成になると思われる。

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