巨大で強力なエンジンでも
繊細でていねいな整備が必要
エンジンのオーバーホールは、次のような工程になっている。
1)分解前検査
以前お伝えしたような内視鏡のようなものを使って、あらかじめエンジン内部の検査などを行なう。
2)モジュールへの分解
エンジン全体を大まかなモジュールごとに分解する。
3)モジュールの分解
分解したモジュールを部品単位に分解する。
4)洗浄
油や薬剤などを使って部品をていねいに洗う。汚れていると傷を見つけづらいので、検査前には必ずきれいに洗浄する。変わりどころではショットブラストを使うものもあるという。
ショットブラストとは、おもに金属などを研磨する場合に使うもので、米粒ほどの金属粒を研磨する対象に高速で打ち付ける方法。小さな町工場だと塗装を剥がしたり、ガラスに模様を描いたりする、砂を使ったサンドブラストが有名だ。エンジンの洗浄の場合は、そのどちらでもなくプラスチック樹脂粒を使ったショットブラストをかけるそうだ。
5)検査
検査と修理は表裏一体で、まずさまざまな手法で検査が行なわれる。最も基本となるのは、目視。目で見て傷やクラック、ゆがみなどの問題点を見つけるのだ。
蛍光浸透探傷は少し高度で、検査する部品を薬剤のプールに浸し、それを銀塩写真のように現像してブラックライトを当てる。こうすると薬剤が傷に浸透して、光って見えるというわけだ。
似たような磁気探傷検査(別名マグナフラックス)というものもある。これは部品を磁化して特殊な磁粉をかけることで、傷などが浮かび上がるという方法だ。強力な磁力を使うため、ペースメーカーを入れている人などは近づけない。
他にもIH炊飯器の原理を応用した渦電流探傷(IHの原理で部品内に渦電流を発生させ、その抵抗の変化で傷を発見する)なども使っているという。さらに部品内部には、超音波探傷(部品に超音波を当て、帰ってくる反射波で傷を見つける潜水艦のソナーみたいなもの)なども使っているということだ。