「今世紀、最もセクシーな職業」として近年話題を集めるデータサイエンティスト。米国の経営誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」では、有能なデータサイエンティストの要件として高度な数学的素養やプログラミングのスキルなどを挙げている。
ビッグデータを解析する彼らの年収もスター級だ。優秀なポスドク(博士後研究員)を6週間かけてデータサイエンティストとして養成する研修制度「インサイト データサイエンス フェローズ プログラム」を受けた人の初任給は1100〜1200万円とも言われ、フェイスブックやツイッターなどの大企業に就職していく。
一方、米国と比べてると日本では言葉の定義も定まらず、その差は歴然。しかし実は日本の場合、スーパースターを獲得・育成するより、データサイエンスの仕組みを企業の内部に組み込む方が土壌として合っているのだ。

1分1秒でも現場に早く到着するために、アルソックではビッグデータが活用されている
警備大手の綜合警備保障(アルソック)には、「データサイエンティスト」という職種はないが、センサーから集まる膨大なビッグデータを使ってより早く、正確に警備隊員を現場に派遣する仕組みづくりが以前から進められている。
また、経営の中心にデータサイエンティストを組み込む方法もある。楽天は同社史上最年少の執行役員としてデータサイエンティストの北川拓也氏を抜擢。北川執行役員は、経営の中枢にデータサイエンティストを置き、「顧客の買い物満足度を上げる」方法を模索したいと考えているという。
日本にはもともと、経営陣がデータに強いという土壌があった。1950年代に統計学者のウィリアム・E・デミング博士が日本の経営者に広めた「統計的品質管理」は、モノづくりを支えた原動力となった。ひとりのスーパースターを育成する点では米国が先行しているが、データサイエンスに強い経営者や組織を育てる方は日本が先行しているのだ。
