PC市場の成長はここで終わるのか
そして最大の理由は、ソニーが将来のPC事業の成長に見切りをつけたということだ。
ソニーの平井一夫社長は、「PC市場が厳しい環境に陥り、ユーザーの指向が変わってきた。PC事業をどうするかを考えた結果、ソニーは、モバイル領域では、スマートフォンおよびタブレットに集中していくことがいいと考えた」とする。
平井社長は、PC事業の売却は「苦渋の決断だった」とし、「VAIOは、常にソニーらしいと言われる製品を創出し、他のPCとは違うデザイン、機能、そしてフォームファクターを実現してきた。また、PC市場に一石を投じ続けてきた製品でもあった」と、これまでの事業の成果を評価する。
さらに、「生産や販売といったオペレーション面においても、他の事業分野に先立ってノウハウや資産を築き上げてきた実績がある」とする。PC事業ならではのサプライチェーンは他のビジネスにも大きく貢献したことは明らかだ。
だが、ソニーは、クラムシェル型を中心としたこれまでのPCでは、事業の将来性には限界があると判断した。そして、その代わりにタブレットが事業の主軸になると判断したといえる。その事業領域に、過去の資産を持ちこまずに、軽い体質で挑むというのがソニーの狙いということになる。これは経営という観点でみれば、的を射たものだ。
一方で、PC事業を継承する新会社においても、従来の1100人の体制から、250~300人体制へと規模を縮小。さらに、設立当初は、これまでの商品構成を見直したうえで、日本を中心にコンシューマーおよび法人向けPCを、適切な販路を通じて販売するというに、事業エリアを限定する計画だ。日本における事業規模は、ガートナージャパンの調べによると、2013年実績で約76万台。これはパナソニックのレッツノート、タフブックの全世界の販売数量と同等規模となる。
この規模では、調達量を背景に調達価格が決定するインテルのCPU、マイクロソフトのOSの調達においては、マイナスに働く。関係者の試算では、これだけで1~2万円のコスト増になるとみる。従来と同じ製品を作ってもそれだけ最終価格が上昇することになる。つまり、よほど付加価値を訴求できる製品を投入しない限り、成功はおぼつかない状況にあるともいえる。
しかし、それはもともとVAIOが目指してきた世界である。VAIOにとっては、プラスとなる体制が整ったとはいえまいか。
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