このページの本文へ

RHEL 7は年内にリリース予定

レッドハットが第3の選択肢としてCentOSを支援する背景

2014年02月12日 14時00分更新

文● 渡邉利和

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2月6日、レッドハットは同社の基幹製品であるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)に関する説明会を開催した。説明は、米本社のプラットフォームプロダクトマーケティング担当シニアディレクターのマーク・コギン氏が行なった。

レッドハットのCentOSプロジェクト参加

 マーク・コギン氏はまずこれまでの同社の歩みを振り返りつつ、Linuxの現状について簡単に紹介した。すでに繰り返し語られていることではあるが、サーバーOSはメインフレームやUNIXの減少傾向が顕著で、将来的にはWindows ServerとLinuxの2種類のOSのみが残ることになると予想されている。さらにコギン氏は、今後Windows Serverの出荷数は減少に転じる一方、Linuxが伸び続けるため、2017年にはWindows ServerとLinuxのシェアはおおむね50:50になるという予測を紹介し、Linuxが今後サーバーOSとしてますます存在感を高めていくとした。

米本社 プラットフォームプロダクトマーケティング担当シニアディレクター マーク・コギン氏

 また、同氏は先月発表されたレッドハットのCentOSプロジェクトへの参加について紹介した。従来レッドハットでは、Linuxに関して“fedora”と“RHEL”の2系列の開発プロジェクトを推進してきた。先進的な新機能開発はfedoraの役割で、RHELはエンタープライズ向けのサーバーOSとして安定性と信頼性を重視する。端的に言えば、fedoraで開発された新機能の熟成が進み、充分な安定度に達したところでRHELに取り込まれる、と言う流れになる。

Red Hatにおけるプラットフォーム開発プロジェクトの位置づけ

 CentOSはこうした新機能開発の流れとは独立した位置づけとなる。レッドハットはRHELのライセンスは無償としているが、だからといってRHELがタダで自由に使えるということではない。RHELを始めとする同社のソフトウェア製品はサブスクリプションモデルで提供されるため、ユーザーはサポート契約を締結し、年額費用を支払うことでソフトウェアを利用することになる。

 とはいえ、Linuxには新たなソフトウェア開発のためのプラットフォームとしての役割もあるため、“無償で自由に利用でき、かつ一定レベル以上の安定性も実現されている”といったものが求められているのも確かだ。CentOSをこうしたニーズを満たすための“第3の選択肢”として位置づける、というのがレッドハットがCentOSプロジェクトを支援する理由だという。

RHELを無償で利用したいというニーズ

 CentOSは、市場では“Red Hatクローン”として受け入れられてきた。RHELもオープンソースソフトウェアであり、そのソースコードは公開されている。そのため、このソースコードを元にディストリビューションを開発することが可能であり、CentOSもそうして作られている。CentOSは、“無償で使え、RHELに限りなく近いディストリビューション”だと言って良いだろう。

 逆に言えば、市場には一定規模で「RHELを無償で利用したい」というニーズが存在するわけだ。レッドハットおよびRHELの大きな価値はその手厚いサポート体制にあるわけだが、サポートはなしで自力で何とかする代わりにコストを下げたい、と考えるユーザーも存在するということだ。こうしたニーズに応えるには、CentOSプロジェクトを支援するという形以外にも、RHELを無償で利用できるようにする、という手も考えられる。もちろん、「ソフトウェアは無料。サポートは有料」というモデルに完全に移行する形だけでなく、たとえば「開発用途に限っては無償」といった条件を付与する形など、さまざまなやり方が考えられるだろう。

 この点についてコギン氏に尋ねたところ、同氏からは「今回のCentOSプロジェクト支援というやり方以外にもさまざまな選択肢について検討を重ねた」との回答が得られた。その中で、ユーザーやコミュニティからの支持が得られ、かつ深刻なネガティブインパクトのない選択肢としてCentOSプロジェクトへの参加というやり方が選ばれたのだという。

 今後もCentOSはRHELの開発プロジェクトからは独立を維持し、従来通りの形で存続することになる。これがベストのあり方だとは思わないものの、従来通りという意味ではまずは妥当な落としどころとは言えそうだ。

次期バージョン「RHEL 7」では3要素を強化

 コギン氏はまた、現在βテストが進行中の次期バージョン“RHEL 7”の概要についても紹介した。RHEL 7に関しては、「安定性」「柔軟性」「利便性」の3要素について様々な機能拡張が行なわれている。安定性では、「プロファイルに基づくパフォーマンス最適化」や「ファイルシステムの選択肢の拡大」、柔軟性では「アプリケーションコンテナ」や「Windowsとの互換性向上」、利便性では「より容易なインストールとデプロイ」「OpenLMIを利用したシステム管理」などがポイントとなる。

RHEL 7の6つのハイライト

 仮想化の進展やクラウド環境の普及などの結果、サーバーOS単体での進化はあまり注目を集めなくなった感があるが、進化が止まったわけではない。さまざまなソフトウェアスタックを支える土台として、安定して効率よく動作するOSが求められている状況に変わりはないため、RHELの進化もそうした要件を特に重視して継続していることが伺える。

■関連サイト

カテゴリートップへ