Atom Z3770、8.3型のWUXGA(1920×1200ドット)解像度ディスプレー、充実のインターフェースとアクセサリー。製品担当者が「最強のWindowsタブレット」と自負するレノボのThinkPad 8。
その開発過程は、問題を解決し、解決し、時には利用して“最強”へ辿り着こうとする作業だったようだ。開発陣の中からタブレット開発 部長の加藤敬幸氏、タブレット開発・タブレットソフトウェア マネージャの内田宏幸氏、ThinkPad 液晶&タッチ開発の鄭懿氏に話をきいた。
「めくるとカメラ起動」も楽なものではない
—— まずクイックショット・カバー、かっこいいですね。使いやすいですし。
内田氏「苦労した甲斐がありますね」
鄭氏「ありますね」
加藤氏「ぱっと見は、というより、実際に使っていてもなかなか気付かないと思うのですが、見た目のシンプルさとは裏腹に苦労が詰まってもいるアクセサリーでして……」
—— というと?
加藤氏「まず、『カバー側を持ってぶらさげても本体がカバーから外れない』というのを念頭に設計をすすめていったのですが、強力なマグネットを仕込むと地磁気センサーに影響が出てしまうんですよね。地磁気センサーは地球が発する磁力を読み取るセンサーなので」
—— 言われてみれば!
鄭氏「しかし、磁力が弱過ぎると簡単に外れてしまって使いものにならないので、磁力を弱めるにもぎりぎりのラインがあります」
—— うーむ、難しい問題ですね……どうやって解決したのでしょう?
加藤氏「地磁気センサーに近いマグネット1つだけ、極の向きを変えるという方法がうまくいきました。つまり、仕込んだマグネットの内4つは同じ向き、一番上の1つだけ他の3つと逆向きということですね。これで磁力を打ち消し合って、地磁気センサーへの影響を最小限に留められました。クイックショットカバー側のマグネットも、本体にあわせて一番上だけ極が逆向きです」
—— ということは、クイックショット・カバーは側面全体でくっついているわけではないんですね! ちなみに“上1つだけ”逆向きにしたのには何か意味があるんですか? 真ん中から半分ずつ逆にするとか、互いちがいにするとかではだめなのでしょうか。
加藤氏「色々パターンを試しはしたんですが、あまり複雑にし過ぎると組み込みの段階が複雑になってしまって、今度は工場での生産性に影響が出てしまうので。『上の1つだけ逆にする』という方法でうまくいったのはラッキーでしたね」
—— ユーザーだけでなく、生産する現場にも気を配る必要があるというわけですね。ThinkPad 8の開発陣にしか作れませんね! このカバーは。
内田氏「そうですね、我々にしか作れないカバーだと思います! あと、もう1つ秘密があるんですよ。“どんな状態でもドッグイヤー(端の三角の部分)をめくればカメラが起動する”がコンセプトのカバーですから、ロック状態でもカメラが起動するようにしなくてはいけません」
—— 確かに、ロック画面からでもカメラ、起動しますね。
内田氏「そこで問題になったのは、Windows 8.1の標準機能です。Windows 8.1でロック状態からカメラを起動するには、画面を下方向へスワイプする必要があるんですね」
加藤氏「ディスプレーが消灯している状態からカメラを起動しようと思うと、電源ボタンを押して画面を点け、ドッグイヤーをめくる必要があるということです。でもそれだと“クイックショット”ではないですよね」
—— そうですね。それだとめくるアクションの意味が小さくなりますね。
内田氏「なので、ソフトウェア的に制御しないと、『クイックショット・カバー』にはならなかったわけです」
—— ソフトウェア的に?
内田氏「つまり、消灯・ロック状態でドッグイヤーをめくったときには、『ディスプレーを点け、画面を下向きにスワイプした』という動作をThinkPad 8側でエミュレートしているんです。Windowsを“ちょっとだけだましている”わけです(笑)」
—— なるほど! そういうことですか。ぜひ本体とセットで購入したいアイテムですね、クイックショット・カバーは。なんでも、6割強の購入者が本体と同時購入しているとうかがっていますが……。
鄭氏「そうなんですよ!」
内田氏「本当、調整を重ねた甲斐がありました」
