EPUBビューアとして見ると?
巷で販売されている電子書籍は、フォーマットの違いは別にすると、大きく「固定レイアウト型」と「リフロー型」に分類される。全体の傾向として、紙の出版物を電子書籍化したものは前者、電子書籍向けに新たに書き下ろしたものは後者を選ぶことが多い。今回の本は、図やキャプション、吹き出しを駆使して解説するなど凝ったレイアウトを必要としない内容であり、迷うことなくリフロー型を選択した。
電子書籍に関心がある向きには言わずもがなだが、フォーマットに「EPUB」かつ「リフロー型」を選択すれば、KDPやiBookstoreといった主要ストア向けコンテンツの制作過程はほぼ1本化できる。今回のKindle本も、まずEPUBを制作し、Amazonが提供するツール(KindleGen)を使い変換したファイル(*.mobi)をKDPに送信している。iBooksにはHTML5対応やJavaScriptの埋め込みなど独自機能はあるが、その機能を必要としないかぎりは"素直な"EPUBファイルを制作し、それを各ストア向けに調整したものを販売することが合理的というわけだ。
しかし、単純に電子書籍ビューアとしてKindleとiBookstoreを比較した場合、iBookstoreのほうが魅力的に映る。ビューアもMac版が存在するし(Kindle for MacはAmazon.co.jpで購入したコンテンツを扱うことが難しい)、Canvasなど利用できないタグがあるKindleのフォーマット(KF8)に比べEPUB3/CSS3との互換性も上だ。iOS版Kindleアプリでは、日本語タイトルで検索機能が動作しないという問題もある。今回の本に関していえば、断然iBooksのほうが閲覧しやすい。
男一匹、どうにかこうにか体裁を整えて販売にこぎ着けた電子書籍「OS X Mavericks対応 defaultsコマンド活用術 !」。これまで20冊以上の単著をものした経験がある筆者だが、完全セルフパブリッシングは実に心細かった。正直、気心の知れた編集者との共同作業のほうがラクだ。しかし、何事も経験、伝聞とは見えてくるものが違うはず。今回の経験を踏まえ、これからもニッチな情報を届けることができるよう(この嗜好性だけは直せない)、電子書籍という活躍の場を維持していく所存だ。ご支援のほど、よろしくお願いします!
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