2013年の「CPUクーラー最強王座決定戦」のいよいよ第3回。第1回、第2回に続き2013年に発売された空冷CPUクーラーの中から合計13製品(+リテールクーラー1種)を取りあげて性能を比較していこう。
テスト環境 | |
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CPU | AMD「FX-8350」(4GHz) |
マザーボード | ASUS「Crosshair V Formula」(AMD 990FX/SB950) |
メモリー | Patriot「Patriot PSD38G1600KH」(DDR3-1600 4GB×2) |
ビデオカード | ELSA「GeForce GTX 650TI Boost S.A.C」(GeForce GTX 650Ti Boost) |
SSD | Intel「SSDSC2CT240A4K5」(SATA3 240GB) |
電源ユニット | Seasonic SS-760KM(80PLUS GOLD) |
OS | Windows 8.1 Professional 64bit版 |
テスト方法は第1回と同じなので、まだ見てない人は第1回を参照してほしい。
スタンダードな使い勝手
Thermalright「Venomous RT Rev.SB-E」
第3回の1発目は、Thermalright製サイドフロークーラー「Venomous RT Rev.SB-E」だ。ソケット775/1156/1366専用としてファンなしで2010年に販売された「Venomous X」、その後AM2/AM3系に対応し120mmファンが標準装備された「Venomous X RT」(日本未発売)の流れをくむ製品である。琥珀色のファンブレードが特徴的だ。
●対応ソケット:775/1155/1156/1366/2011、AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2
●寸法/重量:160(W)×88(D)×160(H)/約780g
●ファン回転数:700~1500rpm±10%(PWM制御)
●風量:24.8~53.3CFM±10%
●ノイズ:17~28.5dBA
●実売価格:6500円前後
●製品情報URL:http://www.thermalright.com/html/products/cpu_cooler/venomousx_rt_rev_sb-e.html
「Venomous X/X RT」から最も目立つ変更点はベース部分が若干コンパクトかつ簡易な設計になったこと。そのためヒートシンク自体の重さも50g軽くなっている。そのかわりLGA 2011に標準対応することで対応プラットフォームを選ばない設計に変更された。
横から見ると“翼端”にひねりが加わったような独特のフィンデザインやヒートパイプの本数などはそのまま継承されている。CPUとの接触面は平面出しとニッケルメッキが施された銅板だ。
組み立て自体は同じThermalright製クーラー「Macho Rev.A(BW)」などと同じ方式。ベース部分をマザーに完全に残してヒートシンク部だけ取り外せるため、メンテナンス性はそこそこ高い。ただしヒートシンクがベースに対しオフセットされていないため、背の高いヒートシンク付きメモリと干渉しやすいデザインになっている。
搭載ファンは700~1500rpmと回転域が狭めのものを採用しているが、実際動かしてみるとアイドル時のファンノイズは36dBAと他の製品に比べやや目立つものだった。ただし高負荷時のファンノイズは他製品に比べそれほど大きくない。
比較的厚みのないヒートシンクを採用している割に、本製品は4.6GHz出のテストを無事クリアした。ただしCPU温度は80度と、4.6GHz通過組としては最も高い。サイズの割には冷えるという評価はできるが、少々性能的にパンチがない。PCケースや搭載パーツと干渉しにくい状況でもなるべく冷却性能を確保したい時に使いたい製品だ。
アイドル時 | ||||||
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CPU温度 | チップセット温度 | メモリー温度 | VRM温度 | ファンノイズ | ファン回転数 | |
39.0 ℃ | 37.3 ℃ | 37.5 ℃ | 49.7 ℃ | 36.0 dBA | 876 rpm | |
純正より | -3.0 ℃ | -3.1 ℃ | -2.2 ℃ | +3.0 ℃ | +2.0 dBA | -1132 rpm |
高負荷時 | ||||||
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CPU温度 | チップセット温度 | メモリー温度 | VRM温度 | ファンノイズ | ファン回転数 | |
80.0 ℃ | 34.4 ℃ | 42.5 ℃ | 50.3 ℃ | 42.7 dBA | 1513 rpm | |
純正より | +1.0 ℃ | -9.0 ℃ | -8.2 ℃ | -2.4 ℃ | +0.2 dBA | -2154 rpm |
白さにも驚きが隠されていた
ENERMAX「ETS-T40-W」
次はENERMAXがリリースした「ETS-T40-W」だ。ENERMAXといば電源ユニットメーカーとしては定番どころか鉄板級のメーカーだが、ここ数年はCPUクーラーのラインナップを堅実に増やしている。本製品は2011年に同社がリリースした「ETS-T40」シリーズの最新派生モデルのうちのひとつだ。
●対応ソケット:775/1150/1155/1156/1366/2011、AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2
●寸法/重量:139(W)×93(D)×160(H)/約610g
●ファン回転数:800~1500/1800/2200rpm(PWM制御)
●風量:37.57~71.3/86.7/105.9CFM
●ノイズ:17.3~24.3/28.3/31.2dBA
●実売価格:5800円前後
●製品情報URL:http://www.enermaxjapan.com/cpu-cooler/ETS-T40/White-Cluster.html
ETS-T40-Wの見どころは、ヒートパイプからファンまで真っ白に統一されたその外見にある。ヒートシンクを着色した製品は珍しいものではないが、基本的に見た目追求目的の製品ばかりだ。しかしETS-T40-Wの塗装は「Thermal Conductive Coating」と呼ばれ、この塗装で熱伝導性を向上させている、ということ。
この塗装のない「ETS-T40-TAV」(残念ながら今回未検証)では熱抵抗値(低いほどよい)0.09度なのに対し、本製品のそれは0.085度。たった0.05度ともいえるが、塗装の力を使ってでも冷えを追求する、という同社の気概が読み取れる。むき出しのアルミ製フィンだと指紋や油脂成分が残りやすいが、この塗装をすることで目立たない。
その他特徴としては、CPU表面とヒートパイプが直接接触する「Heatpipe Direct Touch」構造の採用、フィンの形状や穴の配置を工夫し、ヒートパイプ裏側の空気のよどみを排除したり、ヒートシンク内部の空気の流れを加速する設計など、他のETS-40が備える特徴はすべて備えている。
固定方法はベース部分を完全にマザー部分に残しておける方式だが、バックプレートの固定時にマザー裏側から工具をあてる必要がないため、PCケースに組み込んだ状態でも装着しやすい、という点も評価すべきだろう。
これだけこだわった要素を詰め込んだだけあって、4.6GHzでのテストを見事に完走。CPU温度の最高値は72度と、4.6GHz突破組の中ではHyper 212Xに近い性能を発揮。ただしファンノイズはHyper 212Xよりもわずかに低い値を示しているため、静音性も良好だ。機材調達の関係で塗装の効果が検証できなかったのが残念なところだ。
アイドル時 | ||||||
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CPU温度 | チップセット温度 | メモリー温度 | VRM温度 | ファンノイズ | ファン回転数 | |
34.0 ℃ | 34.5 ℃ | 37.7 ℃ | 46.5 ℃ | 35.5 dBA | 988 rpm | |
純正より | -8.0 ℃ | -5.9 ℃ | -2.0 ℃ | -0.2 ℃ | +1.5 dBA | -1020 rpm |
高負荷時 | ||||||
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CPU温度 | チップセット温度 | メモリー温度 | VRM温度 | ファンノイズ | ファン回転数 | |
72.0 ℃ | 33.3 ℃ | 44.4 ℃ | 48.3 ℃ | 44.6 dBA | 1503 rpm | |
純正より | -7.0 ℃ | -10.1 ℃ | -6.3 ℃ | -4.4 ℃ | +2.1 dBA | -2164 rpm |

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