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大谷イビサのIT業界物見遊山第12回

サイボウズ×さくらインターネット対談記事の背景とは?

IT媒体の新年って、年頭所感のコピペでよかったんだっけ?

2014年02月04日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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先月掲載したサイボウズとさくらインターネットの社長対談がおかげさまで好評を博している。今回の対談記事を作った背景は、もちろん両者のシナジーへの期待が大きいが、IT媒体の年始に一石を投じたいという意図もある。

2人のインタビュー記事で感じたシナジーの予感

 事の発端は、2013年始に掲載した両氏のインタビューにさかのぼる。両社長が年末年始の休みに入る直前の空き時間で取材させてもらったのだが、非常に内容が面白かった。サイボウズの青野社長は、クラウドを始めて1年経って得た市場感やIT市場の動向について、実体験に基づいた感想を話してくれた。一方のさくらインターネットの田中社長は、自然エネルギーの取り込みを中心に、石狩データセンターで進めているチャレンジについて、丁寧に説明してくれた。オオタニの予想をはるかに超える素晴らしいコメントの連続で、記事もとてもよく読まれた。

 そして、記事を書いた後に気がついたのは、2人の共通点だ。起業はほぼ同時期で、ネットバブルやブロードバンドの普及、Web 2.0ブーム、リーマンショック、クラウドの台頭など時代のうねりを一通り体験し、いろんな辛苦もなめている。また、2人とも関西出身で、コスト感覚に優れ、オブラートに包んだような言い方を嫌う。かたやSaaS、かたやIaaSとレイヤーは違えど、クラウドに対して不退転の決意で臨んでいるのも共通していると言えよう。この2人を掛け合わせたら、素晴らしいシナジーが生まれるのではないかと考えたのが、2013年の年始。そして、昨年1年、両社の動向を追うたびにその思いは強くなり、12月に両社の広報のご協力のもと、いよいよ対談が実現したというわけだ。

 社長同士の対談であれば、シナリオをあらかじめ作ったのかと思うかもしれないが、実際にはシンプルなリクエストしかしていない。それはオオタニが2人にインタビューする記事ではなく、対談記事にしたいので、お互いで質問しあってくださいということ。ネタをオオタニが提供し、それについて2人がディスカッションするという体裁にしたかったのだ。

 まさに「出たとこ勝負」だったが、懸念は杞憂。フタを開けてみれば、ミラクルとも言えるコメントがズバズバ飛び出す素晴らしい対談となった。オオタニは対談をテキストに興し、コンテキストに基づいて、整理しただけで済んだ。読む人によって響くコメントはそれぞれ違うと思ったので、基本的に全文を興し、ほぼ割愛していない。その成果物が、今回の3本の記事というわけだ。

 おかげさまでPVもSNSの反応も非常によく、多くの読者がそれぞれ違う部分で反応してくれたようだ。また、お二方からも「非常に楽しい対談だった」という、コメントもいただいた。自分でもやっていて楽しかったし、いろんな意味で記者・編集者冥利に尽きる企画であった。

本数は少なくとも手の込んだ満足度の高いコンテンツを

 こうした記事を仕込んだ理由は、もう1つある。批判を恐れずゴーマンをかますと“IT媒体の年始になんだかカツを入れる企画”を入れたかったのだ。

 IT媒体の記者にとって、年末年始はわりとヒマなはずだ。外資系の会社は本国がホリデーに入ってしまうため、12月の中旬には休みに入ってしまう。プレスリリースや記者発表会もなくなり、1月中旬過ぎるまで忙しくならない。コンシューマー媒体は年始恒例のCES(Consumer Electric Show)があるのでよいが、ビジネスやIT系のニュースは突発的なセキュリティ事件や買収でもない限り、かなり減ってしまうのだ。

 とはいえ、PVはきちんと確保しなければならない。で、一部のIT媒体がなにをしているかというと、各社から発表されている社長の年頭所感をそのまま記事としているのだ。個人的にはこれが気にくわない。年頭所感自体は企業の戦略を社長が語るものなので、それ自体はネタとしては正しいのだが、そのまま載せるのは正直マシンでもできる作業。インタビューするとか、論評を加えるとか、もう少しやり方があるだろうと思う。紅白の泉谷しげるばりに、「お前ら!年頭所感コピペした記事なんか作ってんじゃないですよ」と言いたい(やや弱気ですが……)。そんな反発もあって、年始に実のある記事をやりたいと思って作ったのが、今回の企画だ。

 かくいう私も昨年の後半はタイアップの記事作成に注力しすぎ、メディアとしての仕事をさぼった。この点を個人的には反省している。そのため、以前からやりたかった企画に注力した。先ほどは“ヒマ”と書いたが、裏を返せば、年末年始は本来デイリーの仕事に流されずに、きちんと企画を仕込める時間が確保できる。だから執筆も、編集も、本当に時間をかけた。おかげで年始の記事の本数は他媒体に比べて少ないが、かなり満足のいく仕事ができたと思う。

 対談記事の他にも、12・1月は、末岡さんの力作であるストールマンの記事、大塚の力作であるHyper-V Server 2012の特集、拙著のEightのインフラ記事もよく読まれたので、再度チェックしてもらいたい。

 というわけで、こういうホームラン記事を何本も量産していきたいと考えています。遅ればせながら、今年もよろしくおねがいいたします!

筆者紹介:大谷イビサ

 

ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。


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