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注目は最強のアプリ、NAMMショーのベストバイを掘り下げる

2014年01月30日 17時00分更新

文● 四本淑三

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15のオリジナルシンセ/ドラムマシンが使える「KORG Gadget」

 KORGのアプリものというと「レガシーコレクション」から始まって以降、ずっと自社製品クローン路線だったわけですが、ついに来ました、実際にはありもしない3DCGで作られた得体の知れないシンセやドラムマシンが、15個も!

  これら音源を「ガジェットコレクション」と呼ぶようです。ここらへんは普段からあーでもないこーでもないと、音が出るものを妄想し続けている楽器メーカーのみなさまの本領発揮でしょう。それぞれ明確な個性を持ったシンセ、ドラムマシーンがゾロっと並んでおります。

 これらガジェットは「London」「Chicago」とビルケンシュトックのように都市の名前が振られておりまして、これらを選ぶ操作は、リッジレーサーなんかでレーシングカーを選ぶ感覚に似ていますから楽しいです。

素敵ガジェットその1「KIEV」。ベクター・シンセシスによる不思議な音と操作感。画面上半分はノートエディタ。各ガジェットともピアノロールで編集します

素敵ガジェットその2「Chicago」。TBあたりをイメージしたハードなシンセ音担当。画面上半分はパラメーターのエディット画面。各ガジェットのパラメーターは録音中に記録されます

素敵ガジェットその3「Amsterdam」。SEやシンセのワンショット音などサンプリング音源をプレイバック。ブームボックススタイルでヤンキー入ってます

素敵ガジェットその3「Kingston」。チップチューン専用音源です。「JUMP」とか「RUN」といった変なパラメーターも付いています。アーケードマシンを模したチープな筐体が最高

 ガジェットはそれぞれ個性が明確です。ポリシンセには設定したコードに対して音をはずさない「Chord」という機能が付いています。キーとスケールを設定すると、モノフォニックシンセでも音を外さないよう、メロディーやベースラインが刻めるようになっており、スケールはモードから民族音楽方面まで幅広く用意されておりまして、音程の入力に関しては、Kaossilator的なUIと同等のイージーオペレーションを実現しております。

キーやスケールはガジェットひとつずつに設定可能

  で、私、前にKORGの製品には以下のような特徴があり、今回は1と4はないと申し上げました(関連記事)。

  1. 得体の知れぬ概念を既存筐体で安上がりに提案(例: Kaossilator)
  2. 予想の斜め上から唐突に飛来した何か(例: littleBits Synth Kit)
  3. 潜在ニーズを先回りし過ぎた復活案件(例: MS-20 mini)
  4. 真空管

 まるでオチのように真空管を扱った罰なのでしょう、ここにありました。

「Chicago」ガジェット画面の右上

 これどう見ても真空管です。というわけで間違いを謹んでお詫びし、ここに訂正させていただきます。真空管はやっぱり今回もあったのだと。

 で、これらガジェットを配置し、DAWのようにトラックメイクしていくわけですが、画面構成がちょっと新鮮。ズラッと並んだ横長の帯状のもの。これは複数のガジェットのシーケンスが集まった「シーン」と呼ばれるものです。トラックではありません。このシーンをつなぐことで、曲を構成して行きます。通常トラックと呼ばれるものは縦方向に並んでおりまして、下のミキサー画面と対応した位置関係になっております。Ableton Liveのセッションビューみたいなもの、と分かりやすいでしょうか。

下に各ガジェットに対応したミキサー、上にシーンが並ぶプレイバック画面

 入力には外部のMIDIコントロールにも対応しておりまして、ほかのアプリにサウンドをペーストできる「AudioCopy」、BluetoothでほかのiOS向けアプリと同期する「WIST」にも対応しております。

 作ったソングはDropboxに書き出したり、SoundCloudを利用したアプリ内の「GadgetCloud」で共有します。ソング数、トラック数は無制限ですが、これはiPadのスペックに依存するそうで、最新のiPad Air/iPad mini retinaなら、同時に20~25トラック、CPUパワーを節約するフリーズ機能を使うと30~35トラックが使えるそうです。私が仕方なくiPad Airを買った理由をお察しください。

  開発側が「シンセサイザースタジオ」と呼んでいるくらいで、このアプリだけでいくらでも曲ができそうです。ただしマシンパワーは食います。大きなモバイルバッテリーを用意して出かけてください。オーディオトラックの録音ができないので、ボーカルやギターが入れられないのも残念ですが、Audiocopyを使ってほかのDAWアプリにトラックを飛ばせばいいんです。

 結論を言いますと、これはもう売っていますので買ってください。私は買いました。iOS 7の動くiPadがなかったもので(KORG GadgetはiOS 7以降対応)、あんまり欲しくなかったiPad Airと一緒にです。思えば初代iPadもあんまり欲しくなかったのに、iMS-20のために買ったのでした。Appleの諸君はKORG様に足を向けて寝ないように。リリース記念として2月23日まで特別価格2900円(通常価格3900円)と大変お安いです。

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