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共有ストレージの性能問題を解決する「PernixData FVP」の真価

仮想化のプロが作ったサーバーフラッシュのハイパーバイザー

2014年01月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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複数の仮想サーバーでストレージを共有する場合、パフォーマンスの問題は避けて通れない。ネットワールドが国内で展開する「PernixData FVP」は、サーバーに搭載されたフラッシュとソフトウェアを組み合わせることで、このパフォーマンスの問題を解決する。

既存のシステムに容易に導入できるソフトウェア

 2012年に設立されたばかりの米パーニックスデータは、仮想化の専門家たちに設立されたベンチャーだ。CEOのプージャン・クマール(Poojan Kumar)氏は、15年間の仮想化に携わってきたベテランで、VMwareのデータグループや現オラクルのExadataの共同設立者でもある。ちなみに共同設立者であるCTOのサテアム・ヴァナリ(Satyam Vaghani)氏は、長らくVMwareのストレージ部門を率い、VMFSの開発にも携わった功労者だ。

米パーニックスデータ CEOのプージャン・クマール氏

 パーニックスデータ設立の背景は、共有ストレージにおけるパフォーマンスの問題をソフトウェアで解決しようというものだ。クマール氏は、「仮想化により、データセンターは大きく変わった。しかし、今度は共有ストレージにおけるパフォーマンスの問題が起こっている。フラッシュを使えば、こうした性能の問題を解決できるが、現状では別のストレージボックスが必要になってしまう」と語る。この問題を純粋にソフトウェアで問題を解決しようというのが、同氏が「業界初のフラッシュハイパーバイザー」と呼ぶ「PernixData FVP」になる。

 PernixData FVPは、複数のサーバーをまたいでフラッシュを統合できるユニークなソフトウェアだ。サーバー側のフラッシュをクラスター化することとで、SANストレージを拡張せずに、仮想化による性能のボトルネックを解消する。クマール氏は、「論理的にサーバーのフラッシュをアグリゲーションしていくものだ。VMwareがCPUとメモリに対してやってきたことを、われわれはフラッシュやストレージに施しているのだ」と説明する。最大の特徴はソフトウェアで提供されるため、既存環境への展開が容易なこと。「ハイパーバイザーの中にカーネルモジュールとしてインストールできるという点が重要だ。既存のストレージをそのまま機能を使えるし、仮想アプライアンスも必要ない」(クマール氏)という。10分以内で導入ができ、vMotionやVRSのようなVMwareの機能はそのまま利用できる。

 リードとライトの両方でアクセラレーションできるというのも大きなメリット。ホスト数が増えるほどパフォーマンスをリニアに伸ばすことができ、遅延に関しても、大幅に短縮できるというメリットがある。一方で、フラッシュの種類の違いは問題にならないのか? クマール氏によると、「典型的なSSDの場合、2万IOPS、PCIeのフラッシュでは7~10万IOPSだ。われわれのアーキテクチャはフラッシュの種類を問わず、これらの速度の違いは吸収することができる。将来的に新しい媒体が増えてくることを前提としている」とのこと。スケールアウト性も、PernixData FVPの魅力というわけだ。

ホスト数が増えれば増えるほど効果が高くなる(同社資料より)

インフラを入れ替えずに性能や効率化に大きなインパクト

 PernixData FVPのインパクトは、仮想化環境のストレージの利用においてパフォーマンスとキャパシティを分けることができる点だ。「PernixData FVPによってストレージのデザインに変革が起こる。仮想化インフラを拡張したい場合でも、キャパシティはストレージ、パフォーマンスはPernixData FVPに任せることができる」(クマール氏)。

 発売されてまだ日も浅いが、すでに本番環境に導入しているユーザーもいるという。クマール氏は、「企業の規模は問わない。仮想化に性能に課題を感じているユーザーであれば、どんな企業でも導入対象となる。サービスプロバイダーは、既存のシステムを変更せずに仮想化の高速化を実現したり、ハイパフォーマンスの階層を作る例が多い」と語る。

 実際の効果はどうなのか? クマール氏は、「ある金融機関では、ストレージのインフラを入れ替えずに、CPUの利用率を半分に抑え、メモリの利用効率を80%向上できた。また、イギリスのコンサルティング会社ではIOPSを12倍、遅延も30msから1.7msに短縮できた。ストレージのI/Oをサーバーにうまくオフロードしている」と語る。用途としては、SQL ServerとVDIが多いが、オラクルやSAP、マイクロソフトなどのビジネスアプリケーションでも利用されているという。

 日本では仮想化において高い実績を持つネットワールドが販売を手がけている。「ネットワールドは、日本でVMware導入に早期から貢献している。われわれも日本での仮想化に貢献していきたい」とクマール氏は語る。今後はNFSもサポートしていくほか、マルチハイパーバイザー対応も進めていくという。

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