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日本のベンチャー投資文化は25年遅れている

2014年02月04日 07時05分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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――日本には中小機構など公的機関もあるが、ベンチャー支援は?

 日本政府のベンチャー政策へは批判も多いが、それなりに各種の制度が充実しており、うまく活用すれば役に立つものも多い。例えば中小機構は近年ネット系を中心とする多数のベンチャーファンドに熱心に出資をし、それらのファンドが昨年はかなり多数のイグジットを行い、大きなリターンを生み出している。

中小機構は日本国内のベンチャーを対象にしたイベントも開催している

 また、日本政策金融公庫は株式に似た性質の「資本性ローン」での融資を始めている。通常の銀行ローンで月100万円ずつ返済しなければいけないとすると、その返済のために、本当にやりたい事業を差し置いて、目先で100万円稼げる仕事をしなきゃいけなくなる。

 これに対して資本性ローンは、7年後に元本をまとめて返済すればよく、金利も、赤字のときは0.9%、黒字になると8.55%といったように、利益(負担力)に合わせて変動する。株で資金調達すると創業者その他の株主の持株比率が薄まってしまうが、借り入れはこの「希薄化」が発生しない。資本性ローンをベンチャー投資と組み合わせてうまく活用するといいと思う。

 米国でも、ベンチャーの資金調達は基本的には株式を活用するが、シリコンバレーバンクという銀行はベンチャーに融資をしている。例えばデータセンターへの設備投資をする際にサーバーを担保に貸付をしており、フェイスブックも同行から資金調達していた。ただ米国でもシリコンバレーバンクのような業態は珍しく、なかなか難しい商売だ。10社に10億円貸したとしても、利ざやが3%しかなかったら収入は3000万円しかないが、1社がつぶれるだけで1億円損してしまう。彼らも、有望ベンチャーの増資のタイミングに潜り込んで、キャピタルゲインで大きく儲けているようだ。


――ベンチャーにとって日本にチャンスはない?

 考えようによっては日本の方がチャンスがある。

 米国でのベンチャーの上場前の資金調達額は、フェイスブックが3000億円、グーグルは2000億円など、大量の実弾が飛び交う戦いになっているが、日本はより小さい資金で数千億円以上の時価総額になる企業も多い。日本はベンチャーにチャレンジする人が米国より圧倒的に少ないので、その分、競争が少ない。例えば、楽天の時価総額は現在2兆円超だが、上場前に集めた資金はたった5億円程度。

 リブセンスに至っては上場直前の資本金は1500万円、ベンチャーキャピタルの出資もゼロ。米国では、有望な領域と見れば、すぐに10~100億円の資金が投下され、ライバル社が何社も現れることになるので、こんなことはまず考えられないだろう。




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