ストリーミング規格でも標準化への争い
近年はHTTPベースの動画配信技術、特にPCやスマートフォン、テレビやタブレットなど多様なデバイスで再生できる「Adaptive Streaming」へのニーズが高まっている。Appleが開発した「HTTP Live Streaming(HLS)」と、Adobeの「HTTP Dynamic Streaming(HDS)」、Microsoftの「Smooth Streaming」が従来の主要規格だ。
このストリーミング規格も、前述した次世代コーデックと無縁ではない。なぜなら、ストリーミング規格とは別にコーデックが存在し、ストリーミング規格ごとに対応するコーデックが異なるからだ。Apple製品で使用されるHLSはH.264をサポートするものの、今のところH.265とVP9は対応していない。
そこに現れたのが「MPEG-DASH」。特定のコーデックには依存しないため、H.264はもちろんVP8もOK、すでにVP9やH.265のサポートに向けた取り組みも開始されている。AdobeとMicrosoft、Akamai、Netflix、Dolbyにdts……など多くの企業がフォーラムメンバーとして参加している。すでに「ISO/IEC 23009-1」として国際標準規格化され、今後対応する製品/サービスの急増が見込まれている。
一方のAppleはHLSの標準化を目指し、IETF(Internet Engineering Task Force)への働きかけを継続している。「DASH Industry Forum」には参加していないため、当面MPEG-DASHがApple製品で正式サポートされることはなさそうだ。
VP9を使用したMPEG-DASHによるストリーミング映像は、Google ChromeやVLCを使えばMacでも再生できる。Google(YouTube)が用意したサンプルムービーも用意されているので(関連リンク)、試してみるといいだろう。
HLSはApple製品だけでなくAndroid OS(4.x以降)にもサポートされ、NETFLIXやNHKオンデマンドといった商用サービスにも採用されるなど豊富な実績を持つが、ストリーミング配信の標準規格となるかは疑問だ。頻繁にアップデートを実施するなど開発を主導するAppleのカラーが強いうえ、複数の異なるDRMを運用する機構もない。個人的には現状HLSで不満はないが、今後どうなるのか、そこに若干の不安を感じる。
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