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独創的なツイン・イコライズド・エレメント方式を採用した異次元の音

元ソニー技術屋のコラボイヤホン「TH-F4N」はカナル型の快作だ

2014年01月25日 12時00分更新

文● 四本淑三 

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閉管共振の問題とは?

 TH-F4Nはダイナミック型ドライバーを使った密閉型カナルタイプ。この価格帯のイヤホンなら、大抵はバランスド・アーマチュアのマルチドライバーか、バランスド・アーマチュアとダイナミック型ドライバーとのハイブリッドを想像するはずだが、TH-F4Nには10mm径のダイナミック型ドライバーが、片チャンネルにつき2基ずつ入っている。それも背中合わせで。

 2基のダイナミック型ドライバーは独立したエンクロージャーに収まり、エンクロージャー同士は「コ」の字型のパイプでつながっている。これが先の「ツイン・イコライズド・エレメント方式」の証である。では、この特殊な設計で低減を狙った「閉管共振」の問題とは何なのか。

背中合わせにレイアウトされたダイナミック型ドライバーと、それを収めるエンクロージャーがコの字型のパイプでつながれているのが、ひと目で分かる特徴

 まず閉管共振というのは、音が管の中を通る際に、音が共振して一定の周波数にピークが生まれる現象。分かりやすく言えば、土管の中に入ると音が「キーン」と響くようなこと。あれと同じ現象が人の外耳道でも絶えず起きている。一般的に外耳道の鼓膜までの長さは25mm~30mmと言われ、3kHz前後と10kHz前後にピークができるらしい。ただ、これは生まれつきのものなので、我々はこの特性に慣れていて、特に違和感を覚えない。

イヤホン未装着の状態でも開管共振は起きている

共振周波数のピークを相殺するツイン・イコライズド・エレメント方式

 しかし、ここにカナルタイプのイヤホンを装着すると、鼓膜までの間が密閉されるために、6kHz前後と12kHz前後に共振周波数がシフトする。普段の共振点とは違うため違和感を覚えることになり、特に聴覚が高い感度を持つ6kHz前後の周波数は、かなり強く感じるようだ。iPodがヒットし、イヤホンリスニングの機会が増えて以降、「音が耳に刺さる」という表現を頻繁に目にするようになったが、それはこの帯域を指すようだ。

カナル型イヤホン装着で、管の片側が塞がるため共振周波数が変わる

 このピーク成分を抑えるために、イヤホンを設計するメーカーはさまざまな工夫をしている。たとえば普及価格帯のカナルタイプなら、不織布のようなものをドライバーと耳の間に挟んで音響抵抗とし、高い周波数を通さないようにしているのもそのためだ。しかし、これでは狙った周波数のみを落とすのは無理な上に、6kHz以上の高音域まで透過しなくなるので、文字通り「一枚何かを通したような」こもった音になってしまう。

ダイナミック型カナルタイプと音響抵抗

 そこでマルチドライバーにしてネットワーク周波数を変えたり、ドライバーから外耳道までの「音道」を帯域によって分割し、音が到達する長さを変えて、このピーク周波数の音圧が気にならないようバランスを取った製品もある。

 一方、音茶楽のツイン・イコライズド・エレメント方式は、ドライバーを背中合わせに配置し、ドライバー正面から出た音をパイプでつなぐことで、その位相差により閉管共鳴のピーク成分を相殺しようというもの。こうすることで、物理的なフィルターが不要となり、高域まで伸びきった音と、ツインドライバーによる低域の再生能力向上が図れるという。

 音茶楽はこのFlat4シリーズ以前に「Tornado equralizer(トルネードイコライザー)」と呼ばれる、音を渦巻状の管を通すことで位相差を作り、閉管共振に起因する問題を軽減する音響回路を設計していた。その発展形が、この製品ともいえる。

背中合わせのダイナミック型ドライバーをパイプでつないだ「ツイン・イコライズド・エレメント方式」

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