アイドル・CINEBENCH実行時では低消費電力化
3D描画時は消費電力が上昇気味
最後に「Watts Up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を比較してみたい。高負荷時はCINBENCH実行中と3DMarkデモ(Fire Strike)実行中の2パターンで比較する。
ダイの製造プロセスはRichlandが32nmだが、Kaveriでは28nmに微細化している。「A10-6800K」に比べるとアイドル・CINEBENCH実行時では低消費電力化され、GPUがからむ3DMarkでは性能が出る分消費電力が上がっているようだ。
ただFire Strikeのデモ実行中の消費電力は、「A10-7850K」と「A10-6800K」では“消費のされかた”が違う。「A10-6800K」は最初120W程度まで上がり、描画負荷の高い橋の上の格闘シーン(ここで計測)に入ると80W台後半に落ち込む。
これに対し「A10-7850K」は最初から90W台を推移する感じ。3D描画時のワットパフォーマンスは「A10-7850K」の方が良好といえる。
しかし「A10-7850K」といえどCPUに負荷をかけた時のワットパフォーマンスは、「Core i5-4670K」に大きく差をつけられた。GPU部の性能は良いがCPU部はイマイチ、というこれまでのAPUの傾向はKaveriにも継承されているようだ。
内蔵GPUの性能は上がったが
活かせるソフトが少ない
以上ざっくりとKaveriを見てきた。アーキテクチャーが大きく前進し“APUの理想形”というべき製品であることは間違いないが、CPUのパフォーマンスについてはCore i5はもとより1世代前のフラッグシップよりやや劣る。
BIOSを更新すれば既存のFM2+マザーでも利用できるが、既存のRichland世代のAPUを使っているなら、無理に乗り換える必要もないだろう。GPUの性能向上は魅力だが、2万円余の投資でCPUを買い替えるなら、その予算でビデオカードを買った方がずっと快適になる。
Mantle対応も魅力だが、肝心のゲームが1本もリリースされていない現状では、絵に描いた餅も同然だ。Mantle対応の「Battlefield 4」が出てきたら、ぜひ追試したいところだ。
となると鍵はHSAを上手く活用できるアプリの登場だが、ご存知の通りGPGPUは暗号解読や特定の画像処理など、並列計算が命の処理でないとあまり活きてこない。こちらもソフトの拡充がネックになっているのである。
「A10-7850K」はGPU内蔵型CPUとしては面白いが、その真価を発揮できるようになるには、対応ソフトの充実を待たなくてはならない。この意味では“未来のCPUのあるべき形”を示した戦略的な製品であると評価できるだろう。
※お詫びと訂正:タイトルのスペルに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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