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HTML5で描く未来 クラウド2.0が社会を変える (角川EPUB選書) |
「HTML5」によってこれからの社会やビジネスはどう変わっていくか? そんな未来を考えるセミナー『「クラウド2.0」が社会を変える。西村卓也氏「HTML5で描く未来」セミナー』が2013年12月20日、インターネット・アカデミー渋谷校で開催された。
講師は、『HTML5で描く未来 「クラウド2.0」が社会を変える』(角川EPUB選書)の著者である西村卓也氏(角川アスキー総合研究所 客員研究員)。セミナーを主催するインターネット・アカデミーが先日、「W3C公式HTML5講座」を開講したばかりということもあり、社会人を中心とする多くの参加者が集まり、講師の話に耳を傾けた。
まるで「夢のテーマパーク」HTML5の正体
西村氏ははじめに、HTML5誕生の経緯と背景を説明した。テッド・ネルソンの「ザナドゥ」、チャールズ・ゴールドファーブの「SGML」といった“HTML以前”に存在した技術から、ティム・バーナーズ=リーによるHTMLの発明までの流れを一挙に紹介。HTMLがネットの標準文書形式として普及し、CGIとJavaScriptが加わったことで「プログラムのインターフェイス」としても使われるようになり、昨今のクラウドコンピューティングへつながっていったと説明した。
HTML5は定義が曖昧と言われることも多いが、西村氏によると、
- 新しい、従来よりセマンティックなタグを含んだHTML
- 新しい、従来より表現力が向上したCSS
- 新しい、きちんと仕様定義されたAPIに対応したJavaScript
といった、多くの周辺技術を含む「夢のテーマパークのような仕様」を指すことが多いという。西村氏は「Webの夢を叶えるバズワードこそがHTML5の正体だ」と話した。
「プログラムが書けること」こそHTML5の本質
周辺技術を含む(広義の)HTML5では、さまざまな機能がブラウザー上で使えるようになっている。よくいわれるのは、グラフィックを描画できる、ビデオやオーディオを再生できるといった点だが、「技術者の視点」で特に重要なのは、「プログラムが書けること」だという。
「従来のJavaScriptはちょっとした動きを作るためのものに過ぎなかった。HTML5でJavaScriptは本格的なプログラム環境の1つとなり、あらゆるプログラムがJavaScriptで書ける」
特に、ChromeやFirefoxといった最近のWebブラウザーはJavaScriptのコードを機械語に変換して実行するコンパイラーを内蔵しており、「他のスクリプト言語よりも実行速度が速くなっている」(西村氏)。
こうした「JavaScriptのプログラム環境化」による大きな変化が、「マシンやOSに依存しない、ブラウザーさえあれば動く」プログラムが簡単に作れるようになることだ。この「ブラウザーさえ」というのが肝で、PCやスマートフォン、タブレットだけでなく、冷蔵庫や電子レンジなど、あらゆるデバイスがクラウド端末に変わる可能性があるという。
「たとえば、電子レンジからレシピを参照するのではなく、レシピのページから電子レンジを制御したりといった、物理世界とWebとの接点が生まれる。物理世界にリーチするHTML5は、社会を変える存在になるのではないか」。