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サイボウズ、さくらのトップが熱血対談!日本のITを斬りまくる 第2回

常識にとらわれないクラウドビジネスの捉え方とは?

クラウドビジネスはお客様もパートナーもハッピーにする

2014年01月20日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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「10年間、Pentium Ⅱのサーバー使っているお客様とかいます」(田中)

青野:さくらさんは昔から価格がスゴイですよね。

大谷:でも、kintoneの880円/月もすごいと思いますよ。

青野:いや、僕たちのようなソフトウェアって、なんだかんだ10年は値下げしなくて済みます。でも、さくらさんの業界ってけっこう価格変えないと行けないですよね。それはきつい……。

田中:確かにきついですが、ストックビジネスなんで、10年間くらい同じ料金払い続けて、Pentium Ⅱのサーバー使っているお客様とかいるんですよ。最新のスペックではなく、安定して動いて欲しいというニーズも多いので。

大谷:一方で、パッケージのソフトウェアはバージョンアップしてもらうのが難しいですよね。

パッケージのソフトウェアはバージョンアップしてもらうのが難しいですよね(大谷)

青野:そういう場合、僕たちに問い合わせがあっても、「すいませんが、保守切れです」と言うしかない。機能的にも古いし、「誰得だ」という話です。業界は、サブスクリプションという形に向かっています。それはベンダーが安定経営したいというだけではなく、お客様といい関係ができるからです。お客さんもサービスがダメだったら切るという権利も持てます。切られるのが怖いので、提供する側もよいサービスを続けなければなりません。これは心地よい緊張関係です。

田中:とはいえ、ストックビジネスで、売り上げを作っていくためには、ある程度の品揃えが必要になると思います。弊社は、個人向けのホスティングや法人向けのVPSやクラウドを展開していますし、最近はストレージやエンコーディングが欲しいとかのニーズにも応えようとしています。新しいサービスを出さないと売り上げはなまってくるので、とにかくプロダクトアウトで、サービスをかかえていく必要があります。

大谷:創業以来、Linuxサーバーやって、サーバーを自前で作って、今度は石狩にデータセンターまで建てて、さくらさんって走り続けていますよね。

青野:差別化は永遠のテーマです。

田中:差別化に関しては、2つの切り口があります。1つ目は、やはり弊社はインフラビジネスなので、他社に比べて先んじてテクノロジーを取り入れ、差別化すること。もう1つはサービスラインナップで、たくさんのお客様に長く使ってもらうこと。たとえば、VPSの場合、480円であまり動かないVPSと、ちゃんと動くけど5000円かかるVPSがあったら、980円できちんと動くVPSを作って、間の価値を埋めていきます。この2つのバランスが差別化の大きな要因ですね。

「500円は値切れませんが、500万円のサービスは超値切られます」(田中)

大谷:クラウドにおけるパートナー戦略って、お二方ともどう考えてますか?

青野:僕たちがクラウドを出すときは、パートナーがメリットを感じるビジネスモデルが見いだせていませんでした。 当時の販売パートナーは、基本的にクラウドに対してネガティブ。「またダイレクトモデルに戻るのか」とか、「うちらがサーバー売るの邪魔するのか」とか、「SIで食っていけないじゃないか」とか、いろいろ言われました。

「SIで食って行けないじゃないか」とかいろいろ言われました。(青野)

大谷:でも今は数多くのパートナーがいますよね。

青野:はい。確かに最初はダイレクト販売だったけど、やっていくうちにクラウドは他の製品やサービスとつながっていくことがわかったんです。昨年は、自社のパッケージをクラウド化するためにサイボウズと組んでくださる40社ほどのパートナーと契約を結びました。たとえば、パッケージの会計ソフトとkintoneを組み合わせて、kintoneに一部のデータを持って行くとか。だから、クラウドがダイレクトモデルというのは、僕の中では違和感があって、クラウドになるともっとパートナーモデルになっていくという感じです。

田中:逆に私たちは自社でやろうというカルチャーがあって、パートナー戦略が本当に苦手。私自身も昨年くらいまではそう思っていたし、会社の中にも自社でやったほうが利益が高いという人がいっぱいいます。

青野:社風なんでしょうね。

田中:理由の1つはコンシューマーの存在だと思います。うちって売り上げのほとんどは法人からですが、利益はコンシューマーからが多いんです。ですから、パートナーと組むより、コンシューマーに直接宣伝して、製品を買ってもらった方がいい。

青野:法人向けサービスで利益にならないのはなぜですか?

田中:コンシューマーは基本的に定価で物を買ってくれます。500円のサービスを値切るお客さんはさすがにいません。でも、500万円の法人向けサービスは超値切られます(笑)。

やはり500万円のサービスは値切られますねえ。(田中)

青野:確かに(笑)。

田中:でも、パートナー戦略をうまくやっているところが売り上げは伸ばしているし、最近はパートナーシップは重要と思い始めています。

大谷:実際、マイクロソフトさんとの提携も発表しましたしね。

「クラウドネイティブの使い方は今までから考えると信じがたい」(青野)

青野:パートナー戦略とは違った、ちょっと大きい話になるんですが、僕はクラウドの登場で組織の壁がなくなると思うんです。うちのお客様のある介護の会社は、顧客に報告書見せたいからといって、会社のIDを顧客に渡してしまうんです。イントラネットを売ってきた者からすると、この使い方はにわかに信じがたい。でも、クラウドネイティブな人たちって、それが当たり前なんです。

田中:それはすごいですねえ。

青野:何が言いたいかというと、クラウドやっていると「自社」という感覚がなくなるんです。お客様は組織の壁を越えつつあるので、提供側もその感覚でやらないといけない。Dropboxとか、Salesforceとか、横で連携できると、お客様はハッピーです。

田中:でも、横の連携ってなかなか難しいです。

青野:たとえば、うちのクラウドにある動画データをエンコードしたいという方もいるかもしれないけど、cybozu.comでは勘弁してほしい。でも、サイボウズが入口となって、たとえば田中さんのクラウドで、エンコードして、データの保存まで任せたら、お客さんからは「よく分かってるね」と褒められるかもしれない(笑)。そんな時代ですよ。

第3回に続く。

edge

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