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RX10開発者インタビュー後編

写真文化は広がっている――ソニーRX10開発陣が語るデジカメの今後

2014年01月04日 12時00分更新

文● 四本淑三 

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潜在的なカメラユーザーは増えた

―― 同じイメージセンサーを使ったQX100はなぜ出てきたんでしょう?

RX10の製品企画担当、三島さん

三島 コンパクトデジタルカメラ市場がかつてほど元気ではないのは、スマートフォンのカメラの高性能化が原因のひとつと言われています。その中で、カメラメーカーとして生き残る道は何だろうと考えたときに、スマホを敵にするのではなく味方にすればいいと。スマホにはないイメージセンサーサイズや倍率のレンズを用意することで、スマホを記録媒体と液晶パネルとして使ってやればいいということです。

―― すると余計にコンデジが売れなくなるということはありませんか?

三島 今まではカメラを触ったこともなかったような人がスマホで写真を撮っています。それは昔と違うことなわけです。かつては1人に1台カメラを持つ時代なんて考えられなかったわけですが、スマホなら今1人1台持っている。それは写真文化の裾野が広がったという解釈もできる。その中には「写真面白いね」ということで、もっとよく写るカメラがあるなら使ってみたいという人もいるかもしれない。すると乗り換えるだけじゃなく、新しくカメラを買い増ししてくれることになるかもしれない。それは社内でもよく話しています。

―― 確かに写真を撮る機会は増えましたよね。

製品設計を担当した千葉さん

千葉 そこで架け橋的に弊社として提案したのが、QXシリーズのようなカメラなんです。潰し合いではなくてスマホとの融合製品として。さらにその先に、RXとか一眼カメラのαのような、より高画質を追求した製品群も取りそろえている。弊社としてはスマートフォンもカメラもやっているので、ソニーならではの製品ラインアップを提供できると思っています。

―― 僕のような素人も、予算の関係でカメラマンを雇えないというので、写真を撮らなければならなくなったわけです。だから日常的に持ち歩ける、軽くて性能のいいカメラが欲しい。そこにRX10がハマって「作ってくれたみなさんありがとう!」ということで今回おうかがいしたんですが、これはプロが仕事をなくすということでもあるし、プロ機を買う人が減るということでもあって、いいことなのか悪いことなのか、感謝しつつもよく分からないんですよ。

三島 ビデオカメラもそうだと思うんですが、ちょっと前までは肩乗せの大きなカメラを背負って取材されていたと思うんです。それが民生用の小型ビデオカメラの高性能化にともない、プロフェッショナルの現場でも民生用の小型ビデオカメラが積極的に活用されるようになっていきました。それはデジタルスチールカメラでも同じで、それが技術の進化だと思うんですよ。結果的にRX10も、皆さんのお仕事にも十分なレベルに達してきているのかなと思います。技術の進歩が全てだろうと思います。



 開発チームのみなさんにお会いした第一印象は「若い」ということでした。カメラのエンジニアというと、もうちょっと上の世代がシブイ感じでやっているところを想像していたので、これは意外でした。RXシリーズが単なる高級路線に収まっていないのも、若いみなさんが技術的にかなりエクストリームなところを攻めているせいではないかと思えます。

 それで、ひとつ大事なことを聞き忘れていたのですが、この先、RXシリーズはどうなるのか。RX1、RX10、RX100と3つのラインナップができあがったものの、きっと3つだけじゃ終わらないだろうと。何かあっと驚く新機軸があるのではないか。私は期待しております。

 ただ、RX10の後継機種は、できればうんと先にしていただきたい。私のカードの分割払いが終わらないうちに新型を出されても弱りますので、ここはじっくり時間をかけ、最高のものにしていただきたい。そう切に願う次第であります。


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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。

■関連サイト

  • DSC-RX10

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