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DSC-RX10を作った人々に聞く、製品ができたワケ

プロライターがソニーRX10の企画開発者に感謝状を届けてみた

2013年12月28日 12時00分更新

文● 四本淑三 

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レンズ一体型の設計上のメリット

―― フォーマットの違いは別にして、24-200mm/F2.8なんてレンズは聞いたことがないですね。

大畑 イメージセンサーのサイズが1型以上では、ないですね。

千葉 まずこのレンズは非球面レンズを7枚使っているんです。そのうち1枚は薄型非球面レンズであるAAレンズ(Advanced Aspherical=高度非球面成型)です。それで鏡筒を小さくしています。

大畑 AAレンズというのは、レンズ中心の厚みと周辺の厚みの比率、偏肉比が大きい薄型非球面レンズです。この比率が大きければ大きいほど成形難易度が高くなります。

千葉 最初は「こんなレンズ本当にできるの?」という話になりまして、4~5ヵ月くらい、山内、大畑とああでもないこうでもないと悩みました。サイズは0.1mm単位で小さく、もちろん光学特性は妥協しない。一眼のレンズと比較して負けないMTF※2が出ていることは最低条件ですから。

山内 そうですね。ズーム領域全域でF2.8というところで、片ボケの要求精度が小さくなるという難しさがあります。イメージセンサーとの調整の部分ですね。そこをうまく仕込みながら実現させるというところかなと思います。

―― レンズの取り付け位置を、センサーに対して平行にするということですか?

千葉 そのようなイメージです。レンズ製造をしているときに、微妙なガタだったり、バラ付きによって、中心はいいんだけれども、画面の周辺がボケることがある。それを防ぐためにイメージセンサーの調整機構が付いています。「一体調整」と呼んでいますが、イメージセンサーを取り付けるときにMTFを測定して、一個一個調整しています。

―― それはレンズ交換式にはできない、一体式のメリットでもあるわけですか?

千葉 交換式ではできないですね。製造バラつきも考慮して周辺の解像度を上げています。そういった画質についてはRX100でも定評をいただいているんですが、RX10はより厳しい規格で調整しています。もうひとつのポイントは、フォーカス駆動系に新しい技術を使っています。ピエゾ素子という電気を加えると細かく振動するものがあるんですが。

―― ブザーやギターのピックアップに使われているアレですよね。

千葉 そうです。我々は「ダイレクトドライブSSM(Super Sonic Motor)」と呼んでいるんですが、停止精度が非常に高いんです。それができると全体の光学系を攻めた設計ができる。光学系を小さく、フォーカスレンズの可動距離を短かくできるので、フォーカスも速くなるんです。

判子のない不完全な状態だった感謝状は、後日改めて判子を押した上で、額に入れて宅配便でお送りいたしました

そして開発チームのみなさまにも、改めて記念撮影をお願いするなど、お手数をかけてしまいました。当然ながらRX10で撮影された画像です。右から山内さん、千葉さん、大畑さん。すでに年の瀬となり、三島さんはご不在でした。申し訳ありません

 ここで感謝状インタビュー前編は終了。次回後編は、レンズ交換型との住み分け、デジタルカメラの将来などをうかがいます。

※2 Modulation Transfer Function。レンズのコントラストや解像度を評価する方法



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。

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