
本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
さまざまな製品/サービスで楽しませてくれたApple
2013年もAppleはさまざまな製品/サービスで我々を楽しませてくれた。ハードウェアでいえば、「iPhone 5s」「iPhone 5c」に「iPad Air」、そして「iPad mini Retinaディスプレイモデル」。「MacBook Air」などMac製品も、一新とまではいかないものの実のあるマイナーアップデートが施された。
ソフトウェアもiOS 6.1のリリースに始まり、OS X MavericksそしてiOS 7と、着実な進化を見せてくれた。MavericksでOS無償化を実現したことも、ハードとソフトを一体的に提供するAppleにおいては重要なトピックだ。サービスに関しては、ここ日本でもiBookstoreがいよいよオープン、順調に電子ブックの取り扱い数を伸ばしている。
表:2013年の主要な製品・サービス | |
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1月 | iOS 6.1アップデートを公開 |
3月 | iBookstoreを日本で提供開始 |
iOS 6.1.3アップデートを公開(「マップ」の修正) | |
6月 | 米国でiTunes Radioをスタート |
MacBook Airをマイナーチェンジ | |
9月 | iPhone 5sを発売 |
iPhone 5cを発売 | |
iOS 7をリリース | |
iMacをマイナーチェンジ | |
10月 | OS X Mavericksをリリース |
iPad Airを発売 | |
MacBook Pro Retinaディスプレイモデル をマイナーチェンジ |
|
11月 | iPad mini Retinaディスプレイモデルを発売 |
12月 | Mac Proを発売 |
ただし、ソフトウェア/OSには問題が……
しかし、順風満帆だったかといえばそうではない。2012年秋の公開以来、その不具合の激しさ(というよりα版以前の完成度といわざるをえない)でたびたび“ネタ”にされたiOS 6の「マップ」だが、不具合が解消されたのは約半年を経た今年3月のこと。エンドユーザーの信頼は回復しつつあるようだが(関連記事)、ソフトウェアの品質管理プロセスになんらかの問題があるのでは、という疑念はいまだ解消されていない。
10月公開のOS X Mavericksも、「メール」で新規作成したメッセージにISO-2022-JPなど特定の文字コードを指定できない — UTF-8決め打ちへの肯定的な意見もあるだろうが、RFCが今なお尊重されている以上1社の判断でこれを無視するのはいかがなものか — など、首をかしげてしまう仕様が散見された。
ご存知のとおり、Appleは自前の製造ラインを持たないファブレス企業だ。精緻な販売予測のもと、販売開始直後に製品を大量投入できるよう外部委託先を確保し、品質を含め徹底した管理を行なう……iPhoneやiPadシリーズを見るかぎり、この機構は驚嘆するレベルで機能しているように映る。だが、ソフトウェア/OSは違う。カーネル周辺など低位レイヤーを除いては、Appleは自社内に大半のリソース(人材)を抱えるファウンドリーと例えることができるだろう。
前述したiOSの「マップ」は、外部企業の地図データを活用しているにせよ、Apple主導でエンジニアリングを行ないリリースの可否を決断している。Appleの"ファウンドリー部門"でかくのごとき事態が発生したということは、組織のどこかに機能不全が生じ始めているのでは、という疑念さえ出てきてしまうのだ。

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