リア充ボタン
たびたび次男にかかえられてステージに登場するセツコDX。これは「拡張現実シアター 近未来は今」で披露された、ハイテクモービル(未来の車)の運転席にある「リア充ボタン」を押すことで出現する「エア彼女」(笑)。「エア彼女」なだけに、今回のテーマは、風の三兄弟なのでしょうか…!?
次に登壇したのは「テクノ手芸部(かすやきょうこさん、よしだともふみさん)」。テクノ手芸とは、電子工作と手芸を組み合わせた、あたらしいクラフトだそう。ほのぼのとした作品を披露しました。
会場を爆笑させたのは、林雄司さん(デイリーポータルZ)によるプレゼンです。『人間が浮いているように見えるAR(写真)』や『人間が、3Dプリンタで出力されたフィギュアになってしまうAR』ネタなどを披露。でも、よく考えると…、これってARじゃない気も…!?しかし、テンポのいいプレゼンの上手さもあって、会場内は「でも、面白いからいいかぁ…」って、爆笑して許しちゃう人が続出です。
「技術」を昇華させるのは「遊び心」、人々に愛されるには「美」が必要
もし、こうしたアイディアや文脈による拡張現実がダメとなると、筆者の仕事のマジックは全部ダメだということになってしまいます。映画のルーツ、リュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」にしても、観客に一番人気があったのは客席に突入するかのような汽車のシーンでした。ARやイリュージョン・マジックのルーツと考えられている「ペッパーズ・ゴースト」にしても舞台に半透明の幽霊を出現させたことが人々を熱狂させました。
「遊び心」×「技術」がエンターテイメントになり、さらに、そこに「美」が含まれることによって、コンテンツとして人々に長く愛されるようなります。「美」というと堅苦しいかもしれませんが、現代風に言えば「スタイリッシュさ」「クールさ」になるのでしょう。スティーブ・ジョブズにしても、ウォルト・ディズニーにしても、「美」の一点だけは誰にも譲らなかったのは有名な話です。
オールドテクノロジーにとって、ARはライバルになるのか、それとも親友になるか…
ARが現実を拡張することなら、マジックは拡張を現実に見えるようにすること。一見、正反対でお互いにライバルのようにも思えます。しかし、アナログのフィルムとコンピュータ・グラフィックが出会ったことで、映像化が難しいと言われていた映画「ロード・オブ・ザ・リング」や、新たな「STAR WARS」シリーズが生まれ、フィルムカメラをシェアで凌駕したデジタルカメラは、空前のカメラブームを巻き起こしています。
古い伝統や技術と、最先端のテクノロジーは、母親と父親に似ているかもしれません。大切なことは、お互いがどんなふうに付き合うか。ワインと食事の組み合わせを「マリアージュ」と呼ぶように、伝統とテクノロジーのマリアージュこそ、未来を生み出していく。そんなことを感じた『AR忘年会2013』でした。
これをお読みの皆様も、来年はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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