11年目を迎えた今回のDreamforceでは、さまざまな取材ができた。ここではセールスフォース・ドットコムの活動のなかでも特にユニークな「1:1:1モデル」と呼ぶ社会貢献モデルを取り上げる。
1:1:1モデルは、普遍的なモデルである
1:1:1モデルとは、株式と利益、社員の時間の1%を、社会貢献に費やすものであり、昨年度実績を見ると、セールスフォース・ドットコムの社員は年間53万時間以上をボランティア活動に費やし、5300万ドルの助成金を供出し、2万以上のNPOに対して支援活動を行なったという。日本でも382のNPOに対して、東京オフィスを通じて支援活動を行なっているという。また、このモデルは、Google、Workday、VMWareなど、数多くの企業が取り入れる社会貢献モデルになっている。
米セールスフォース・ドットコム ファウンデーション 代表兼共同創立者のスザンヌ・ディビアンカ氏は、「1:1:1モデルは、普遍的なモデルである。企業が行なう慈善活動のベストプラクティスを集約し、実行しているものだ。助成金、ボランティア、製品を総合的に提供するものであり、製品提供までを含めた総合的な支援は、企業だからこそ実現できる慈善活動の姿である」と強調する。
支援対象は、従業員からの推奨に対して、検討を行なうという仕組みだ。そして、キャパシティ・ビルディング・オーガニゼーションと呼ぶNPOのサポートセンターに対して、助成金を提供。「日本では、東日本大震災の際に、社員の安全、家族の安全を確認したのちに、どのような人たちに支援ができるかのかといった検討を開始した。いま、フォーカスしているのは、青少年の育成支援と教育分野への支援である」とする。
成績のいい社員はボランティアにも積極的
この活動は当然のことながら、セールスフォース・ドットコムのブランド価値を高めることに直結している。「ポジティブなブランドであるというイメージづくりには大きく役立っている」と、ヴィヴィアンカ氏。続けて、「社員にとってもロイヤリティが強化され、社会的な責任を持っている企業に勤務することに対して、大きな意義を感じてもらえる。また、イノベーションのドライバーにもなる。1:1:1モデルにおけるマイナス面ない」とする。
そして、「通常の仕事のなかでは接点がない他の部門の人たちとも、ボランティア活動を通じて接点ができるというメリットもある」とする。だが、こうも語る。「1:1:1モデルの狙いはあくまでも社会貢献。ブランドを強化するのが目的ではない。結果として、ブランドが強化されるという形に表れている」とする。
日本でも、この活動への取り組みは積極的だとする。「東京オフィスの社員の100%がボランティアに参加している。前向きに取り組んでいることを評価したい」という。さらに「ボランティア活動をするか、しないかは、従業員の成績には影響しない。だが、成績がいい社員は、ボランティア活動に積極的であるということがわかっている。ボランティア活動に積極的かどうかは、トップタレントの人たちを見極める手法のひとつでもある」と語る。
セールスフォース・ドットコムには、こんな考え方がある。「企業が成功するということは、新たな市場、ビジネスチャンスをさまざまな人に提供することである。社会貢献も同じであり、企業活動の成功は、直接、間接を問わず、社会に貢献することである。売上高や利益という業績の数字だけではなく、どれぐらい社会に貢献しているのか、ということも大事なことである」
企業にとって社会貢献がどれほど大切であるか、ということを理解し、それを活動につなげているのがセールスフォーム・ドットコムというわけだ。セールスフォーム・ドットコムは、この分野で新たなモデルを構築したといってよい。