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ハリウッドではなくフランスのようにはなりたい

クールジャパンと国家戦略−−中村伊知哉氏に聞く

2013年12月26日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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法律をどう変えるか、人をどう育てるか?

−− アメリカの場合は、メディアグループ5社がほとんどのコンテンツを握っているというような状況がありますね。ネット時代には、ワールドワイドで国という切り分けではなくて企業による地図になる可能性もありますよね。

中村 そうなるでしょうね。知財本部では国としての政策の議論をしてるんですが、これまでは国と国でどうかだったけど、もうそうじゃないよねと。GoogleとかAppleみたいなグローバル企業と国のパワーバランスを考えると、ものによっては企業のが強かったりする。これは企業対企業の関係を国としてどうみるかにならざるを得ないし、コンテンツとかメディアに国境とかなくなっちゃった。日本企業としてもそこにどうするかという話です。

−− そこで日本が主要プレイヤーになれるかですね。

中村 政策を考える上でとても難しいのは、日本企業のことを考えるのか、日本のことを考えるかなんです。僕は一貫して日本のことと考えているので、日本のために外資がどんどん入ってきてもいいと考えています。でも議論に参加する人によって立場が変わります。企業や業界団体の人であれば日本の企業を重視するでしょうね。だから議論になっちゃうんですけど。そのときに、ひとつあるのはデジタル化ですね。アナログからデジタルに切り替わるときに、たとえば電子書籍を広げるためには、著作権法をどう変えていくべきかだったりとか、著作権法が厳しい日本ではクラウドビジネスがやりにくいからどうするかとか。

−− ところが、ネットなので米国企業はそれをまたいでやってくる。

中村 そうです。それからパッケージからネットに移行していく中で産業界が世界的なスピードについていけるかという点では、人材もあります。

−− e-JAPAN戦略のときの4本の柱って、ネットワークと電子商取引、電子政府、それともう1つは人材でした。回線は、世界一安いブロードバンドという話はありますが、特に人材のところはどうだったのか?

中村 人材育成の話も変わってきたと思うんですよ。最初はコンテンツを作るプロフェッショナルをどう育てるかで、コンテンツの作り方をちゃんと教えられる高等教育機関が少ないというのが出発点だったんですよ。でも、僕自身は、コンテンツを生み出すプロの育成はそんなに問題じゃないと思っていて、問題は2つで、ひとつはプロデューサー。コンテンツを作る力はすでに日本にはあるので、問題はそれを売る力。海外市場が開拓できてないこともあって、ものはあるんだけど、どうやってビジネスにするか、がない。

−− ジブリのアニメをディズニーに売ってもらっていていいのかって話ですよね。

中村 それは法律の専門家も含めて開発しないといけない。それは日本人じゃなくてもいいわけ。そういうことやってくれる人がたくさんいれば。海外の日本ファンみたいな人でもいい。

 もうひとつは子供の問題。長期的に日本がコンテンツ大国であり続けるためには基礎的な力を国民全体が持たないとだめ。それこそプログラミング学習含めて、小中学生のレベルからどんだけ創造力を高めていくか。これもまだぜんぜんできていない。

−− そこはどのように取り組むのですか?

中村 ここんところ10年ワークショップでやってきたんですが、基礎的な学力はもちろんですが、それ以上に創造力、表現力、コミュニケーション力を高めるべきだという社会的な認識が広がったなと感じています。増えましたので、それ学校でやろうと。10年前に図画工作の時間を倍増しようって言って叩かれたんですけど、いまはあまり叩かれなくなった。そこにデジタルが入って、ここ3年デジタル教科書も出てきて、そろそろ学校でも新しい技術でそういうことをやるべきだと思います。知財本部の機能の中にもデジタル教科書とか、ひとり1台端末っていうのがテーマにあって、そのためには法律も変えないといけない。それを検討して、措置を講じるというのが今年の議題で閣議決定までいきましたから。やっと動くかという状況です。これが進めば自然にいくでしょう。

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