2012年に世界最大手の携帯電話メーカーになったSamsung。今年は年間を通じてスマートフォンで30%以上のシェアを維持した。まさに王座安泰といえるが、背景には膨大なマーケティング予算がある。
そんなSamsungが次に強化を図るのは直営店のようだ。いまや宿敵となったAppleと訴訟を繰り広げる一方で、SamsungはApple Storeのデザイナーを引き抜いたことが報じられている。
ビジネス史上最高額のマーケティング費用
140億ドル(約1兆4300億円)……Samsungが2013年の1年間で費やしたと見られているマーケティング費用だ。ここには広告はもちろん、プロモーションや各種マーケティングの費用も含まれる。
ちなみに、これを報じたReutersの記事ではアイスランドのGDPと比較しており、これを上回る額なのだという。長年ブランド価値ランキングでトップだったコカ・コーラ(Interbrandの調査では今年、13年首位だったコカ・コーラがAppleに1位を譲った)を軽く凌ぐ額だ。
この金額は当然と言うべきか、ビジネス史で最高の額なのだとか。Samsungは売上の5.4%をマーケティングに割いているが、Appleの0.6%、General Motorsの3.5%を上回る比率だ。参考までにSamsungは2012年に広告だけで43億ドル程度を費やしたというが、2013年はさらに湯水のように宣伝にお金を使ったようだ。
スマートフォンやタブレットではそれなりに投資の効果が出ている。Samsungのシェアは2013年第1四半期の30.8%から、さらに31.7%、32.1%と増加している(Gartner調査)。フラッグシップのGALAXYシリーズはもちろん、ハイエンドには手が届かないがSamsungのスマートフォンを持ちたいという好影響が、世界の多くの市場でみられるようだ。
だが、費用対効果では疑問もある。SamsungはInterbrandのブランド調査で8位、前年の9位から1つランクアップしたが、1位のAppleはもちろん、IT業界だけでも、Google(2位)、IBM(4位)、Microsoft(5位)とまだ上がいる。InterbrandのMoon Ji-hun氏はReutersに対し、「Samsungのようにブランドに明確なアイデンティティーがない場合は、広告に投資することが最善の戦略」としながらも、このペースを長期的に維持できるのかという点には首を傾げている。
プロモーションが成功していない例として挙がっているのが、同社がウェアラブル端末の「GALAXY Gear」で展開した、「Next Big Thing」キャンペーンだ。ファブレットである「GALAXY Note 3」とのセットでプロモーションを勧めたが、Gearの売上げは80万台とNote 3の500万台の4分の1にとどまっており、Samsungの思惑通りにセットで利用するユーザーは多くないようだ。
Appleからの引き抜きで直営店戦略を進める?
すでにカナダ、豪でオープン
広告やプロモーションの枠を超えて、Samsungがブランドを強化する動きに出ている。それが直営店だ。これまでも新製品発表時に臨時スペースを設けてプロモーションを行なうことがあったが、2012年にカナダ・バンクーバーで初の直営店をオープン、オーストラリア・シドニーにも開いた。
2013年に入ってからは、米国最大の家電チェーンBest Buyの中にSamsung Experienceとして専用スペースを設ける提携を発表した。スマートフォン、タブレットなどの同社の製品を集めて陳列し、専門スタッフによるアドバイス、サポートサービスを受けられるもので、Best Buyの1400店舗に登場するとしていた。
そして12月に入り、SamsungがApple Storeの小売店デザイナー、Tim Gudgel氏を引き抜いたというニュースが流れた。Gudgel氏は2008年にAppleに入社し、ニューヨークのアッパー・ウェスト・サイドにあるガラス張りの店舗を手がけたメンバーという。
このApple Storeのガラス張りの天井についてAppleは2012年に特許を出願しており、Gudgel氏の名前が入っているとか。Samsungの動きはそれだけではない。5月にもMichael Forrest氏を採用しているが、Forrest氏はAppleで2002年から、小売担当を6年務めた後にMicrosoftでも顧客エクスペリエンス担当シニアディレクターを務めてきた人物だ。2014年はSamsungが小売分野でなんらかの積極的な展開をすることは間違いないといえそうだ。
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