年末年始の旅行シーズンがやってきた。JTBによると、1泊以上の旅行に出かける人数は前年比2%増の3052万人(国内・海外旅行の合算)で、過去最多となる見通し。日本経済新聞の調査で前年比2.55%増となった冬のボーナスの影響と、最大で9連休がとれる日並びの良さも需要増加を後押ししている。
旅行のときも、スマホやタブレットといったガジェットは肌身離さず持っていたいのが心情。移動中や乗り継ぎといったちょっとした時間に、音楽や電子書籍を楽しみたい。しかし、こと飛行機においては、離着陸時の電子機器の使用が厳しく制限されている。電子機器の電磁波が機体に悪影響を及ぼす可能性があったためだ。
ところが、その流れが大きく変わりつつある。10月末、米連邦航空局が離着陸時を含む全飛行行程でスマホやタブレットの利用を認める方針を発表。それを受けて、国土交通省も来年中に離着陸時の規制を緩める検討を始めたという。利用可能になるのは「機内モード」にしたスマホなど、機体外部と通信しない設定の電子機器だ。
規制緩和の背景に、スマホやタブレットの浸透があるのは明白だ。事実、それらを前提にしたサービスを提供している航空会社もある。例えばピーチ・アビエーションは、空港ターミナルの専用Wi-Fiから映画や雑誌といったコンテンツを手持ちのスマホやタブレットにダウンロードし、機内で楽しめるサービス「high!」を始めている。
また成田空港や仙台空港など、国内外でWi-Fiを無料で使える空港も増加している。海外旅行ではローミングによる高額な請求を避けるため、スマホやタブレットを「機内モード」にしている利用者も少なくないだろう。3G/LTE回線が使えないなか、心強い味方が空港やホテルで使えるそれらのWi-Fiサービスだ。
ただし、気になるのがセキュリティの問題。国内のWi-Fiサービスはともかく、海外の空港やホテルの無料Wi-Fiに危険性はないのだろうか。
「基本的に、パスワードで保護されていない公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスにつなぐのは、推奨できません」と話すのは、大手ITセキュリティベンダー・マカフィーの本橋裕次サイバー戦略室室長だ。
海外ではWi-Fiのアクセスポイントの「乗っ取り」事件が増えているという。「ハッキングツールが出回っており、ハッキング方法もYoutubeで閲覧できる。パスワードで暗号化されていなければ、正規のアクセスポイントに見せかけたニセのアクセスポイントを簡単に作れてしまう」(本橋室長)。
実際に、ニセのアクセスポイントにつながったユーザーの端末から、メールやネットバンキングの情報などを盗み取られる被害が起きている。「特に被害が大きいのは、空港のエグゼクティブ・ラウンジ。そこのWi-Fiを乗っ取り、情報収集する事例が起きている」と本橋室長は指摘する。
いくら外国で電子機器を使いたいと思っても、クレジット情報などを盗まれては本末転倒。旅行先での初夢が「悪夢」にならないよう、旅行カバンと一緒に最低限のセキュリティ意識を持って出かけるといいだろう。