NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の若手研究グラント(産業技術研究助成事業)の一環として、京都大学は変速時に駆動力抜けのない変速システムを開発した。
自動車の変速システムは基本的に変速する際にギアの噛み合いが外れる瞬間があり、エンジンやモーターなど動力計の駆動が車軸側に伝わらない時間が存在する。マニュアル変速の場合はクラッチを切ってシフトするため意識的にコントロールするが、自動変速の場合は”アクセルを踏んでも加速が遅れる”のが運転ストレスとなり、また駆動力が伝わらない時間の速度低下を補うため変速後に余分に加速操作を入れる必要があるなど、運転感や低燃費性能上の問題があった。
無段変速装置(CVT)は変速時にも常時駆動力を伝達するとはいえ、歯車式のギアに比べて伝達効率が悪いためEVでは一般的に採用されていない。また、デュアルクラッチトランスミッションはギア列を2段にすることで次のギアへの移行時間が短縮されているとはいえ、やはり駆動力が抜ける時間がある。
京都大学が開発したシステムは、動力側/車軸側それぞれに非円形歯車を用いて動力を伝達し、変速時には2組の歯車対の中間的な噛み合い状態を作り出すことで、次の歯車対に滑らかに変速することができるという。このため駆動力が伝達しなくなる瞬間がなく、ギアを繋げたときのいわゆる変速ショックも存在しないとしている。
京都大学では、同システムを搭載した小型EVを製作、実証実験を行っている。モーターはエンジンに比べてトルクが得られる回転域が広いため変速装置は2速だが、約10%の航続距離増加効果が得られたという。また、エンジン車両用に4速の変速機構も開発、実験を行っている。
EVなど車両だけでなく、スムーズな変速が行えることから精密位置決めなどが要求されるロボットなどの分野でも利用が期待できるとしている。