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非接触ICの普及が進まない米国でモバイルコマースはどう進展する?

2013年12月16日 15時00分更新

文● 末岡洋子

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Square Marketで
モバイル決済からテリトリーを拡大するSquare

 モバイル決済技術ベンダーとして唯一のパネリストだったSquareのRajaram氏の発言からは、日本進出も果たした、この注目企業がなにを目指しているのかが垣間見ることができた。

SquareのGokul Rajaram氏は、モバイルを利用した決済が、単に物を買うときに必要不可欠な行為から、優れた体験に変わりうることをアピールした

 Squareはスマートフォンに専用のクレジットカードリーダーを装着して、スマートフォンやタブレットで決済できる小売店向けのソリューションがヒット、その後コンシューマー向けのサイフ機能Square Wallet、送金サービスSquare Cashなど次々とサービスを広げている。クレジットカード読み取り端末を持たないカフェや個人商店など「マイクロマーチャント」といわれれる層をターゲットするが、2010年に開始以来約3年で参加企業はすでに200万を超え、2013年の取扱高は100億ドルに到達するともいわれている。

 Rajaram氏はまず、モバイルを「顧客とコミュニケーションするためのチャネル」と定義する。コミュニケーションはショッピングの前と途中、そして後で発生しており、これまであまり注目されていなかった「ショッピング前と後が増えている」とトレンドを説明した。

 ショッピング前では、6月にスタートした「Square Market」を紹介する。Square決済ができる店舗が、自社のショップの紹介とともに商品情報などを掲載できるもので、eBayやAmazon対抗と位置づけることもできる。

 これまでコストや技術の問題から自分のウェブサイトを持てなかった店舗が、簡単にウェブ上で存在を示すことができる。Rajaram氏は有効活用している例として、人口が少ない田舎にある食料雑貨店の例を挙げる。Square Marketを通じて顧客にプリオーダーサービスを提供、顧客は事前注文後に来店して商品を受け取り、そして決済するだけ。Square Wallet利用者はSquare Walletで決済を済ませることができる。店側も顧客側もショッピングがスムーズになるだけでなく、「ついでに……」と別の商品をその場で購入する例も増えているという。

 顧客は効率よく商品を選択でき、列に並ぶ必要もない。「エンドユーザー(顧客)が価値ある体験をできるようにすること、顧客企業が最善のコマース体験を提供できることを大切にしている。最善の体験とは、決済はどこかバックグラウンドで行なわれることかもしれない」とRajaram氏。

お金を払うことが、ただの必要な行為から
優れた体験に変えていくことを目指す

 そして、これはSquareの目標でもある。「コマースは(単なる)決済から全体の体験そのものに変わっている。決済一つとっても、単に“必要な行為”から正しい形で提供すれば、“優れた体験”になる」と述べる。Square Walletのユーザーは「VIP気分を味わえるからと積極的に利用している人が多い」という。

 Squareを利用してショッピング体験をスムーズに、便利にする例としてRajaram氏は、店員が商品を顧客の横で説明をしながら、いざお金を払う段となったら(レジに誘導するのではなく)その場でSquareによる決済を提供する。具体的には、スーパーの中にある総菜コーナーで手作りサンドイッチを作ってもらい、その場で決済する(他の顧客と一緒に列に並ばずに済む)例などを挙げた。

 今後の展望としてRajaram氏は、「多くのショップが自分たちの商品リスト情報をオンラインで公開する時代が来るだろう」と予想した。Square Marketはその先駆けとなる。

 ベンチャーキャピタリストのOcchipinti氏はこのような話を受け、「Squareは確かに面倒くさいことを減らしてくれるが、それだけではなくリッチで分かりやすい体験も提供する。これが普及を加速している」と分析した。Occhipinti氏はまた、モバイル決済分野ではSquare以外にも多数のベンチャー企業が生まれており、今後も技術革新が進むだろうという予想も披露した。

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