じわじわながら、着実に伸びているWindows Phone
欧州ではシェアが2桁に
Androidのシェアが8割に達し、Androidの代表選手であるところのSamsungが、Nokiaから世界最大の携帯電話メーカーの座を奪い、Appleと争っている状況を見ると、MicrosoftによるNokia買収は敗者連合という見方もできる。だが、Windows Phoneのシェアはじわじわとのびている。
特にNokiaのお膝元の欧州では、第3四半期のシェアが10.2%に到達したとKantar Worldpanelが報告している。トップはAndroidの70.9%、iPhoneは15.8%。iPhoneはドイツ、フランス、英国のシェアが前年同期から減少し、全体でも20.8%から5ポイントのマイナスとなった。このiPhoneの減少分をWindows PhoneとAndroidが分け合った格好のようだ。
売れ筋は100ドル前半で手に入る「Lumia 520」などの安価な機種だという。Windows Phoneはラテンアメリカ、インドなどの途上国市場でも急成長しており、iOSを超えたという報告もある。全世界ベースのIDCの第3四半期のデータでは、Windows Phoneの成長率は前年同期比156%増、同期最も成長したOSとなった(それでもシェアは3.6%)。
ハイエンドでは、大型画面を搭載した”ファブレット”カテゴリに入る「Lumia 1520」が発売されたところ。出足は悪くないようだが、ハイエンド側での存在感が薄いのは引き続き課題といえそうだ。
アプリでは11月に人気アプリ「Instagram」がやっとWindows Phone用に登場した。開発者の間でも機運は高まっているようだ。Strategy Analyticsのアプリ開発者調査では、2014年にターゲットとするモバイルOSとしてWindows Phoneを挙げた開発者は30%を超え、前年からほぼ倍増となった。Android(84%)、iOS(68%)に大差をつけられてはいるが、「Windowsプラットフォームが3番目のエコシステムとなりそうだ」と同社アナリストはコメントしている。
このようなWindows Phoneの盛り上がりとMicrosoft/Nokiaの合体により、3年後にシェアの面ではAppleに追いつくのでは、という予想も見かけるようになった。なお、Windows PhoneにおけるNokiaのシェアは90%を超えている。
以前紹介したRadio Free MobileのRichard Windsor氏のOS分析によると、Windows Phone所有者の満足度は高く、同氏が主張するエコシステムの3つの条件(デジタルライフへのアクセス、簡単に設定・利用できる、自社サーバーでトラフィックを取得できる)を満たしている優秀な地位にあるという。それにも関わらず、「成果が十分に出ていない」とWindsor氏は語る。改善点として、電話、IE、Officeなどアイコン表示にとどまっているタイル画面の工夫、WindowsファミリーとしてのPC、タブレット、スマートフォンのマーケテング・販売などを挙げていた。
このような中でMicrosoftはNokiaのデバイス事業を傘下に収めることになる。Nokiaを手に入れた後、Microsoftが何をどのように変えていくのかによってWindows Phoneの成否が分かれるだろう。PCメーカーであるHPのCEOはつい先日にも、MicrosoftのSurface投入により関係が変わったと述べている。下手をするとモバイルでも、Windows Phoneをライセンスする他のメーカーとの関係を損ない、Nokiaのデバイス事業も伸び悩む、という可能性がなきにしもあらずだ。
端末ローンチしたJolla
Androidを利用するアプリ戦略
最後にJollaの話を。NokiaがWindows Phoneへの戦略変換をした後、MeeGoチームが2011年に立ち上げたのがJollaだ。JollaはMeeGoの流れを汲むモバイルOS「Sailfish OS」の開発・ライセンス、そしてSailfish OSを搭載したスマートフォンの製造と販売と2つの事業の柱を持つ。Jollaは2013年5月に初のスマートフォンを発表、11月末にフィンランドで地元オペレーターのDNAとローンチの発表会を開いた。初代Jollaの価格は399ユーロとなっている。
Jollaは「Other half」と呼ぶNFCベースのカバーによるカスタマイズなどのユニークな機能を持つが、Jollaチームはアプリが必要なことは百も承知。そこで取った対策が、AndroidのDalvik仮想レイヤーを利用してのAndroid対応だ。Androidアプリストアでは11月末にロシアのYandexと提携し、YandexのAndroidアプリストアを搭載する。このように、Androidのアプリエコシステムに乗っかってスタートできる体制を整えた。
JollaのSailfish OSについては、Android端末上で容易にインストールできるようにする予定だ。これにより、既存のAndroid端末をうまく活用してSailfish OS搭載機を増やすことができる。
Jollaは当面、欧州と中国にフォーカスしていく方針。成功を占うのは時期尚早だが、同じくMeeGoの流れからうまれたTizenと比べると、端末発表にこぎ着けたスピードは評価できそうだ。
なお、Jollaチームは元Nokiaリサーチセンターだった場所を拠点としている。ちなみに同じ施設には、ソフトバンクによる買収で日本でも有名になったSupercellも入っているのだという。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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