World of Tanksの世界へパンツァー・フォー 第5回
私と戦車とWoT――ウォーゲーミングジャパン 宮永忠将氏
WoTを支える謎の役職、ミリタリーアドバイザーとは?
2013年12月13日 18時00分更新
ウォーゲーミング社は日本のミリタリー分野の底上げに寄与したい
宮永 「そういえば、アドバイザー同士のこんな挨拶があるんですよ。初対面で『お前は“技術屋”か、それとも“作戦屋”か?』って聞かれるんです。
どういうことかといえば、兵器のスペックにひたすら詳しくて、戦車を見るとここの装甲は何mmで、ここはこういう構造になっている、という兵器の百科事典みたいな人のことを“技術屋”と呼んでいるんです。もう1つの“作戦屋”はいわゆるヒストリカル系の、作戦はどうだったとか、師団はどこにいたとか、そういった人間の部分を読むのが好きな人々のことです。
この両方の知識を持っている人は非常に少なくて、たいていはどちらかに偏っているのですが、最初の挨拶でそれを聞かれるのですね。
で、私の場合はどちらかといえば作戦屋かなあ、と。もちろん兵器に関しても普通の人より詳しいとは思いますが、陸海空をすべて網羅するとなると限界はありますからね。むしろ、難しい問題が出たときに、誰に当たれば良いか、どの本を調べれば良いか、そういう判断が即座にできることが重要です。そうしてよりいっそう密度の濃いゲームにする。それこそが私に最大限求められた仕事だと思っています。
また軍事や兵器で遊ぶというと誤解を招きそうですが、人を殺すシーンをリアルに追求するわけではなく、あくまでもミリタリーを純粋に楽しむというスタンスは絶対に崩さない会社ですし、その点で安心して関われるなあと思いますね。とはいえ、私はFPSも好きなのですが(笑)」
目の覚めるようなハイディテールは、宮永さんはじめ、ミリタリーアドバイザーの調査の賜物なのだ!
―― 今ちょうどBF4とGHOSTの発売直後ですから、仕事との兼ね合いが大変なのでは?
宮永 「(身を乗り出し)っていうかですね、フリーの仕事歴が長いから言えるのですが、仕事にはゲームが最大の敵なんですよ。昔、『レッド・デッド・リデンプション』に大ハマリして仕事を何本かエライことにしちゃいまして、『もうダメだ!』とPS3を知り合いにあげちゃう、ってところまで行きましたからね(笑)。
というわけで今は趣味のゲームプレイは自制しています。安易にできる環境を作らないよう、仕事はぜんぶMacでやってますよ!」
―― 危ないですからねえ。最近はPCで仕事しながら同時にゲームもできちゃいますから。艦これとか(笑)。
宮永 「World of Warshipsのために集めた資料を電車の中で読んでいたとき、ふと『あれっ、もしかして今、周りの人から艦これのコアなファンだと思われているんじゃ?』と(笑)。
ありがたいことだと思うんですよ。艦これのおかげで、一般の方の日本海軍知識が底上げされたと感じますから」
―― そうですよね、ミリタリーライターとしてホントにうれしいことだと思います。
宮永 「書店から『雪風ハ沈マズ』(※7)が消えたっていうじゃないですか。でも最初に雪風の華々しい活躍から入っちゃったら、そこから日本海軍を調べていくのは辛いだろうとも思いますけどね(笑)。
それはともかく、ウォーゲーミング社としてもエンターテインメントとしてのミリタリーをこれからも追求していきたいですし、それが日本のミリタリー分野の底上げにつながっていけばと願っています」
※7:幸運艦として名高い雪風の戦歴を追った傑作戦記文学。著者は豊田穣。
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『雪風ハ沈マズ』―強運駆逐艦栄光の生涯 (光人社NF文庫)豊田 穣(著)光人社
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