携帯電話キャリアの設備投資が盛んだ。「スマホのつながりやすさNo.1」をうたうソフトバンクは、当初計画より2300億円も積み増した7800億円。高速通信サービスの拡充を目指し、基地局の増設に昨年から力を注いでいる。KDDIも4月から5月に相次ぎ起こった高速データ通信が使用できなくなる障害への対策で、制御装置の増強などに取り組み設備投資を300億円積み増した。今年9月20日に国内発売が始まったiPhone5s、5cは、ソフトバンクモバイル、KDDI、そしてNTTドコモと携帯3キャリアそろい踏みでの販売で、家電量販店でも売れ筋。インフラ面の整備に端末の真打ち登場で、本格的なスマートフォン(スマホ)普及時代が到来したと言える。
多くの人がスマホを日常生活で利用するようになったことで、販促に活用する小売企業やメーカーも増えている。「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」と呼ばれる、インターネットからリアルの店舗へ顧客を誘導する戦略だ。ファミリーマートは、9月下旬に会員制サイト「famima park(ファミマパーク)」を開設し、商品の割引クーポンを配信したり、キャンペーンなどの情報をメールマガジンで配信し、会員限定の景品などと交換できるポイントを付与する。
O2Oで多くの店舗やメーカーが利用しているのが、LINEやツイッター、フェイスブックなどのSNSだ。サッポロビールは、12月3日から26日までの期間限定でフェイスブックを活用した「『麦とホップ』デジガチャキャンペーン」を実施する。サッポロビールのフェイスブックページに参加し、第三のビール「麦とホップ」の缶の画像を投稿すると、抽選で賞品が当たるというキャンペーンだ。サッポロビールは、約13万人のファンがいるフェイスブックページを、年内に15万人までファンを増やすことを目標としている。
O2Oはインターネットから店舗への誘導だけではなく、より精度の高いマーケティング策を実施するための顧客情報の収集も目的のひとつだ。ファミリーマートは、ファミマパークで得た会員情報を活用し、地域や年齢、性別に応じたクーポンやキャンペーンなどを展開する見込みだ。サッポロビールのデジガチャキャンペーンも、ユーザー情報を得る一手段にもなっており、購買データの分析を販促につなげていく考えだ。その他、レオニス・アンド・コーはスマホのタッチパネル技術を活用し、突起の配列でスマホの画面上から電子印鑑を押印するクーポン管理システムを開発。利用履歴をサーバに保存し、小売店への販促アドバイスに用いる。
今後は会員情報や購買動向の分析がより高度になるかもしれない。画面接触以外に、位置情報、加速度、音声といった具合に、センサーや認識技術の固まりとも言えるスマホから得られるデータは幅広いからだ。 例えば11月29日、グーグル日本法人はスマホに話しかけた質問を理解し、音声で回答してくれる音声検索サービスを公開した。「ナレッジグラフ」というデータベースに基づいて単語の意図を解釈して関連情報を出す技術に、音声認識技術、自然言語処理技術を加えたものだ。ユーザーの趣味趣向を理解した上で、質問内容のみならず声の調子や質問の仕方からお勧め商品を紹介する——スマホが「インテリジェントな御用聞き」になる日も遠くないかもしれない。