イメーション傘下になったストレージベンダーのネクサン(以下、NEXSAN)から、書き込み速度を2倍以上に拡大した「Nexsan EシリーズV」が登場した。新製品のハイライトはもちろん、さまざまな“業界初”を成し遂げてきたNEXSANの立ち位置や顧客の事例などを、米イメーション NEXSAN部門のCTOに聞いた。
革新的な技術を導入してきた歴史を振り返る
ビッグデータやクラウドの台頭や、フラッシュの隆盛により、ストレージ市場は活況を呈している。こうした中、1999年設立のNEXSANは、もはやベンチャーといえない中堅のストレージベンダーとして独特の存在感を示している。2013年1月には、デジタル記憶メディア大手の米イメーションがNEXSANを買収。同社のエンタープライズストレージ事業の中核製品として位置づけられたことで、これまで弱点だったリソース不足が解消された。米イメーション NEXSAN部門CTOであるゲイリー・ワトソン(Gary Watson)氏は、「イメーション傘下に入ることで、なによりリソースが増えた。サポート、エンジニア、セールスの人員も倍になった。安心して製品を使えるという点は、お客様にとっての大きなメリットだ」と語る。
同社は、ローコストなHDDでエンタープライズレベルのストレージ製品を作るべく、さまざまな“業界初”を導入してきたことで有名だ。特に自社でアセンブリまで手がけていることを活かし、ハードウェア面でさまざまな工夫を施している。ワトソン氏は、「1999年、ストレージに初めてWebブラウザベースの管理ツールを導入し、2001年にはATAベースのエンタープライズストレージを市場に投入した。2003年にはATA HDDにFCをアタッチし、4Uに42ドライブを収納するストレージを投入している。高密度化の課題である振動を独自の技術で抑えている」と、従来投入してきた革新的な技術について語る。そして、2009年に投入したのが、ドロワーを引き出す形でホットスワップでのHDD交換を可能にする「Active Drawers」、使用していないのHDDのスピンドル自体を停止し、大幅な省エネを実現する「AutoMAID」などだ。
14年目を迎える同社の製品は、北米を中心にさまざまな業種で使われているという。たとえば、シカゴの研究開発機関のFermilabでは14ベンダーとのコンペの結果、NEXSANが選ばれた。「7PBがインストールされており、29PBにまで拡張される。300台のシャーシ、9000台のHDDというレベルだ。とにかくよく働くと評価されている」(ワトソン氏)とのこと。こうしたペタバイトクラスの事例も増えており、ますますAutoMAIDのような技術が活きてくるという。
とはいえ、競合は多く、ストレージ製品の選択肢は多い。EMCやネットアップ、HP、IBM、デルなどの大手ベンダーのほか、PureStorage、Nimble Storage、Violin Memoryなどフラッシュストレージのベンダーも勢いを増している。しかし、ワトソン氏は、「先日こうしたベンダーのうち、Active Storageという会社がいきなり事務所をクローズした。新興ベンダーは投資家からの資金が尽きたら、ビジネスは終わりだ。サポートも受けられない顧客の一部をNEXSANに移行した」と、ベンチャーに企業の重要なデータを託すことに警鐘を鳴らす。
ターボチャージャー搭載のEシリーズV
同社の最新技術をふんだんに取り込んだ主力製品がSANストレージの「Nexsan Eシリーズ」だ。Eシリーズは、2Uで18ドライブの「E18」、4Uで48ドライブの「E48」、4Uで60ドライブの「E60」の3モデルが用意されており、拡張ユニットの装着で最大720TB(E60+拡張ユニット2台)まで実現できる。「1台のラックにペタバイトが入る」(ワトソン氏)という強力な実装密度で、ビッグデータの需要にも応える。
先日、米国で発表された「Nexsan EシリーズV」では書き込み速度を高めた。「E60VTやE48VTなど型番にTが付くモデルは、RAIDコントローラーにターボチャージャーを搭載している。高速なCPUと大容量のキャッシュメモリで、シーケンシャル書き込みは前世代より2倍高速化されている」と、ワトソン氏は胸を張る。具体的な用途としては、高速なバックアップや高解像度なビデオによる監視、メディア・エンタテインメントでの動画の活用、膨大なインプットを持つ科学調査の分野などに最適だという。
また、多彩なストレージ管理機能を持つユニファイドストレージ「Nexsan NSTシリーズ」では、フラッシュとの統合が大きなテーマとなっている。ソフトウェアであるNestOSが提供する「FASTier」では、HDD(SAS、NL-SAS、SATA)とフラッシュに加え、SASのバス上にあるNVRAM、コントローラーごとに搭載されたDRAMまで含めて階層化管理を実現する。これにより、高速なキャッシュを実現するだけではなく、「書き込みデータのジャーナルが、DRAMに書き込まれ、さらにNVRAMにもコピーがとられる。ソフトウェア、ハードウェアの障害や電源断などにでも、(NVRAMにより)データの消失からも保護される」(ワトソン氏)とのことだ。
新製品の「Nexsan NST6000」は潤沢なハードウェアが大きな魅力。最大5PBのストレージ容量を実現し、最大4.4TBのSSD、196GBのDRAM、64GBのNVRAMなどを搭載できる。
そして2014年、いち早くチャレンジする技術としてワトソン氏は「NVMe(NVM Express)」を挙げる。PCI Expressのプラガブル版とも呼べるNVMeは、SSD用のインターフェイスとしてイチから開発されたもので、HDDを前提としたインターフェイスのボトルネックを解消すべく、今後は業界標準となる可能性が高い。ワトソン氏は、「既存のインターフェイスでは、SSDのパワーを真に引き出すことが難しい。その点、NVMeはSASよりもパフォーマンスが高く、遅延も大幅に短縮できる」と述べ、ハードウェアにこだわる同社として、いち早くNVMeの導入に注力するという。また、「オールフラッシュのストレージも近々アナウンスする」と発言し、ハイブリッドストレージカンパニーとしての実力を見せるとアピールした。