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最新+無料のHyper-V Server 2012 R2に触れてみよう! 第1回

初めての仮想化でも大丈夫!な仮想化プラットフォーム入門

Hyper-V Serverを知り、インストールと初期設定をする

2013年12月06日 14時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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サーバーからPC、クラウドまでをカバーする「Hyper-V」

 それでは、Hyper-Vはどんな特徴を持つ仮想化技術なのだろうか。

 Hyper-Vは、マイクロソフトが開発するハイパーバイザ型の仮想化技術である。Windows Server 2008の一機能として初めてベータ版が提供され、その後、機能強化と改良を重ねながらWindows Server 2008 R2、2012、2012 R2に組み込まれている。現在ではクライアントOSであるWindows 8や8.1でも、Hyper-Vベースの仮想化技術である「クライアントHyper-V」が採用されている(64ビット版のPro/Enterpriseエディションのみ)。

 Hyper-Vの登場以前、マイクロソフトでは「Virtual Server」や「Virtual PC」という仮想化ソフトウェアを提供していた。たとえば先述のXPモードは、Virtual PCベースの機能だ。こちらはHyper-Vとは異なり、ホストOS型の仮想化技術を使っている。

 ハイパーバイザ型とホストOS型では、仮想マシンを作る“レイヤー(層)”が異なる。次のイメージ図を見てほしい。

ハイパーバイザ型とホストOS型のちがい。仮想化を行うレイヤーが異なる

 ホストOS型は、ホストOSの上、一般的なアプリケーションと同じレイヤーで、仮想化アプリケーションが仮想マシンを作る。一方で、ハイパーバイザ型はすべてのOSの下のレイヤーに「ハイパーバイザ」と呼ばれる小さなソフトウェアのレイヤーを作り、そこで仮想マシンを作る。

 ホストOS型は、既存のOSに仮想化アプリケーションをインストールすればよいので手軽だが、仮想マシン上のアプリケーションは2つのOSを介してハードウェアにアクセスすることになり、パフォーマンスは低下する。ハイパーバイザ型の場合は、仮想マシンがほぼ直接ハードウェアにアクセスできるため(ハイパーバイザでのパフォーマンス劣化は非常に小さい)、高いパフォーマンスが期待できる。

 最近では、CPU側にハイパーバイザ型に対応した仮想化支援機能(Intel-VT、AMD-V)が追加されており、よりパフォーマンスの高いハイパーバイザ型仮想化技術が広く利用されるようになっている。

 Hyper-Vは元々Windows Serverと一緒に開発が進められてきたので、当然だがWindows環境との親和性が極めて高い。たとえばHyper-Vのリモート管理ツールはWindows ServerだけでなくWindows PC向けにも提供されている。もちろんWindows Server環境の管理ツールである「System Center」も対応している。

 さらに、マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Windows Azure」との親和性も高い。AzureはHyper-Vベースの仮想環境を提供しているので、手元の環境で作成した仮想マシンを、そのままAzureクラウドに持ち込んで実行することができる。開発したアプリケーションをそのままクラウドで公開したり、障害/災害発生時だけクラウドを使ってシステムを動かすといったことも容易なのだ。

 なお、Hyper-Vの仮想マシンで動くOSはWindowsやWindows Serverだけではない。マイクロソフトはHyper-Vの改良を進めるうえで、Linuxなどその他のOSへの対応を強化している。現在はRed Hat Enterprise Linux、CentOS、Ubuntu、Oracle Linux、Debianなどの動作もサポートしている。

Hyper-V+管理用OSの「Hyper-V Server」

 Hyper-V Serverは、Hyper-Vのソフトウェアと、それを管理するために必要な機能だけを備えたWindows Server(この機能限定版OSを「Server Core」と呼ぶ)を組み合わせたソフトウェアだ。Hyper-V Server 2012 R2は、Windows Server 2012 R2がベースになっている。

 Hyper-V Server自身は豊富な機能を備えているわけではない。Windows Server製品が提供するActive Directoryやファイルサーバーなどのサービスは提供されない。グラフィカルなインタフェース(GUI)やエクスプローラーなどは使えず、操作はコマンドラインインタフェース(CUI)で行う。そのぶん、Hyper-V Serverのメモリ/ディスク使用量は非常に小さい。

 Hyper-V ServerもWindows Serverも同じHyper-Vを組み込んではいるが、役割が違うというわけだ。Hyper-V Serverは機能をそぎ落とし、無駄なハードウェアリソースを消費しないように作られたソフトウェアなのである。

(→次ページ、いよいよHyper-V Serverをインストールし、初期設定する)

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