米アマゾンは12月1日(米時間)、無人マルチコプターを活用した配送システム「Amazon Prime Air」計画を発表、2015年に実用化を目指しているという。
公開されたデモ動画では、注文時に「30分以内のお届け便」を選択すれば、Amazon倉庫で使われているような集荷コンテナを8ローターのマルチコプターが掴んで飛び立ち、お届け先の玄関先まで配達して飛び去ってゆくシーンが描かれる(コンテナの回収をどうするのかは不明)。
一見するととんでもない計画に見えるかもしれないが、GPSと自律誘導でプログラムどおりの飛行くらい平気でやってのけるマルチコプター系の技術の進歩からするとそれなりに実現性があるプロジェクト。すでに今年10月にはオーストラリア教科書レンタル企業「Zookal」が学生向けの教科書配送ビジネスを立ち上げている(豪州の学生がそれほど急いで教科書を必要とする理由は不明)。また、同じく今年話題となったドミノ・ピザのピザ配達マルチコプター「ドミコプター」にしても実用化は無理な話ではないだろう。
もっとも、マルチコプターはバッテリをかなり大量・急速に消費してしまう飛行デバイスで、高性能リチウムポリマー電池を使っていても30分も飛べればかなり優秀、空撮カメラなど荷物を搭載すれば劇的に飛行時間が減ってしまう。Amazon Prime Airの「30分でお届け便」のサービス範囲を想定すると、その実現性に関してはいまいち疑問が残るところではある。
とはいえ、Amazon Prime Airのこのデモンストレーションは単なる話題づくりではない。Amazon Prime Airのページに“無人機配送のルール策定はFAA(アメリカ連邦航空局)が進めている”と表記しているように、こういったサービスは現在のところFAAの規定がどうなるかにかかっている。米国では無人飛行機は商業利用できないという規定があり、無人機は軍や警察といった限られたところが独占的に利用している。今年になってようやくいくつかの無人機(軍用に使われているものの民生バージョン)が資源調査用途に使うことが許可されたものの、ラジコン機の延長にあるような無人機はあいかわらずホビー用途に限られてしまっている。
無人機ビジネスはFAAの認可次第で爆発的に広がると予想されているのだが、実際にAmazon Prime Airのようなサービスを展開するかどうかはともかく、このような”配送サービスの未来”を公開することで、米国は細かな規制によってビジネスチャンスを失いつつあるかもしれないよとFAAにさりげなく訴えて(あるいは圧力をかけて)いるようにも受け取れる。