myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第15回
意外にもクトゥルフ神話や怪談との親和性が高かった!?
動画数16万超の「ゆっくり実況プレイ」はホラーと相性◎
2013年12月05日 11時00分更新
TRPGとクトゥルフ神話が再ブレイク!?
ゆっくり実況プレイ動画の流行は「ゆっくり」関連のタグにはどのような影響を与えたのでしょうか。
ゆっくり実況プレイの派生の一種として、「ゆっくりTRPG」タグの動画が2012年から2013年にかけて急激に増加しました。ゆっくりTRPGはテーブルトークRPGのリプレイにゆっくりの声を入れたもので、TRPGのゆっくり実況プレイとも言うべきものです。現在の動画数は約6000、730名ほどが動画を投稿しています。
上のゲームタイトルの表にも「クトゥルフ神話TRPG」が出ていましたが、2011年から投稿がはじまった「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声」などの影響により、クトゥルフ神話TRPGを中心にこうした「ゆっくりTRPG」の動画がよく投稿されるようになっています。
第5回で実況プレイ動画ではホラーゲームが好まれるという点を指摘しましたが、クトゥルフ神話TRPGが好まれたのも似たような傾向があるのかもしれません。
また人力ボーカロイドの手法やUTAU、棒読みちゃんなどを使用してゆっくりに楽曲を歌わせる動画は「ゆっくり」の名が定着する以前からあり、ゆっくり実況プレイが流行する以前から人気がありました。こうした動画はボーカロイドをもじった「棒歌ロイド」というタグが付けられます。
その他のゆっくりの派生タグとしては、やはりホラー系のネット上の怪談などをゆっくりにしゃべらせる「ゆっくり怪談」、様々な物事をゆっくりの声で解説する「ゆっくり解説」、キャラクターをゆっくりが演じてストーリーを進めていく「ゆっくり劇場」、既存の文学作品などをゆっくりで読ませる「ゆっくり朗読」などがあります。
ゆっくり実況プレイの流行によってゆっくりの声をつけることが定着した結果、ゲーム動画に限らず、さまざまなかたちでゆっくりにしゃべらせる動画が投稿されるようになっていった様子がよく分かります。
興味深い点としては、どちらかというと「ゆっくり実況プレイ」の投稿数が落ちついてきた最近になって、「ゆっくりTRPG」「ゆっくり解説」「ゆっくり怪談」といったタグの投稿数が増えてきていることが挙げられます。投稿数の規模としては「ゆっくり実況プレイ」におよぶほどではないですが、投稿者もだんだんとゲーム実況以外の題材に目を向けるようになっていってるのかもしれません。
ゆっくりTRPGタグ最古にして最も再生されているシリーズの初回。シリーズは11話までで打ち切られている。再生数ミリオンを達成した。 |
最後に、前回取り上げたゆっくり以外の合成音声(おもにVOICEROID)によるゲーム実況の傾向をみてみましょう。
VOICEROIDおよびVOICEROID+はAHS社による音声合成文字読み上げソフト。ゆっくりが話題になった2008年の翌2009年12月にVOICEROID月読アイと月読ショウタが発売されました。以降いくつかの製品を発売していますが、グラフ4を見ると月読家(月読アイ・ショウタ)、弦巻マキ(VOICEROID+ 民安ともえ)、結月ゆかり、東北ずん子と、各VOICEROIDともに発売されてすぐに実況プレイに使用されていることが分かります。
それでも2011年まではVOICEROID実況プレイはそれぞれ数名のユーザーが投稿している程度でしたが、2012年にVOICEROID+ 結月ゆかりが発売、以降「結月ゆかり実況プレイ」が急増します。現在「結月ゆかり実況プレイ」の動画は約3700、投稿者数は約500名と、ゆっくり実況プレイの1/20程度ですが一ジャンルを構築しています。
背景には発売直後からMinecraftで結月ゆかり用のキャラクタースキンが公開されるなどの動きがあったようです。またさまざまな実況動画で結月ゆかりが活躍することで“誰だれさんちの結月ゆかり”のようなキャラ付けが生まれている点も面白いところです。
また結月ゆかり実況プレイの人気を受けて弦巻マキの実況プレイも増加、また2012年9月に発売された東北ずん子も実況プレイによく使われています。これらはいずれも結月ゆかりと共演している動画が多く、結月ゆかりのパートナー役としての需要が大きいのでしょう。
2013年4月に無料版公開、9月に正式発売されたCeVIOのさとうささらも実況プレイが増加しています。こちらも結月ゆかりやゆっくりとの共演が多数見られます。
ゆっくり実況プレイの動画をデータから見ると、ある時期に急に伸びたわけではなく、2009年からずっと少しずつ増加し、現在の規模となったようです。一方でずっと伸びていた投稿数も2013年はやや伸び悩んでいます。ゆっくり実況プレイの人気もまた安定に近づいている印象です。
一方で、ゆっくりを使った「ゆっくりTRPG」「ゆっくり怪談」といった新しい動きが最近になって目立つようになってきています。また「結月ゆかり実況プレイ」のようにゆっくり実況プレイの手法を別のキャラクターに置き換える動きも目立ってきました。
合成音声による実況プレイはニコニコ動画でも比較的若いジャンルですが、その中でも時代の移り変わりが起きているようです。
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