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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第231回

SoC技術論 回路を全部つなぎ合わせるバスの選択肢

2013年12月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 最初に前回の訂正をさせていただく。こちらで「iPhone 5cにA7プロセッサーが搭載」と書いたが、これはA6の間違い。今のところA7の搭載はiPhone 5sとiPad Air/iPad mini Retinaのみとなっている。お詫びして訂正します。

iPhone 5sとiPad Airに搭載される、最新の64bit CPU「Apple A7」

iPhone 5に搭載のApple A6以降は
独自コアに切り替えているアップル

 さて、iPhoneの話題が出たので補足したい。アップルもまたARM v8のアーキテクチャーライセンスを受けたメーカーの1つだ。アップルは、A5まではARMのプロセッサーライセンスそのままにCortex-A系のコアを統合していたが、2012年9月に発表されたA6からアーキテクチャーライセンスを受けて独自コアに切り替わっている。

 A6の技術を支えたのは、アップルが2008年4月に買収したP.A.Semiである。P.A.SemiはDECの「Alpha」や「StrongARM」、SiByte(後にBroadcomが買収)の「BCM1400」というMIPSベースのコア、さらにはAMDでHyperTransportやx86-64の設計にも携わったメンバーが2003年に興した会社だ。

 2005年には当時としては驚異的な低消費電力/高性能コアである「PA6T」というPowerPCベースのコアを発表している。

これはFall Processor Forumで発表されたPA6Tの詳細。コアそのものは2GHzでSPECintが1000以上(IBMのPowerPC 970のスコアが800程度)で、消費電力そのものは2GHzでも7W程度とされていた

 このチームをまるごと買収したアップルは、そのままA6の設計に携わらせた模様である。実際、具体的に社名こそ示されなかったものの、2008年第2四半期/上半期の投資家向け報告(PDF)の中で、アップルに対してアーキテクチャーライセンスを提供したと匂わせる記述があり、辻褄はあう。

赤枠の中(これは筆者が入れたもの)の記述が問題の部分。「先進的な携帯電話OEMメーカーが、現在および将来にわたってのモバイルコンピューティングデバイス向けに、アーキテクチャーライセンスを取得」と書かれている

 もともとP.A.Semiの「PA6T」自身が、PowerPCに最適化したコアというよりは、極めて強力なSuperScalar/Out-of-Order構成のCPUの手前にPowerPC向けのデコーダーを付けた様な構成をとっており、携帯電話向けに動作周波数/消費電力のターゲットを見直す必要があったにせよ、4年近くあれば再設計には十分だったと考えられる。そういう設計チームを自前で抱えていたからこそ、アップルは他社に先んじてA7プロセッサーを市場投入できたともいえる。

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