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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第230回

SoC技術論 プロセッサー製作のライセンス料とロイヤリティー

2013年11月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 今回はもう少し初心に戻って、実際にSoCを作ると決めた場合の手順を説明したい。どんなSoCにするかは千差万別であるが、読者の方にもなじみがあるであろう、スマートフォン/タブレット向けのSoCを考えてみよう。

まずはコアの選択
OSはAndroid 4.xを載せたい

 まずアーキテクチャーをどれにするかは、どんなOSを載せるかでおおむね決まる。一般的に通用する製品ということであればAndroid 4.xを載せたいところ。そうなるとまずコアになるCPUのアーキテクチャーはARMかMIPS、x86のいずれかになるだろう。ARMは後述するとして、まずはMIPSとx86を考えてみよう。

小型で低消費電力
MIPS

 MIPSは、最近Imagination Technologiesに買収され、同社の一部門になってしまったが、引き続き「MIPS32」やAptivファミリー、それに最新のものとしてWarriorファミリーの「MIPS P5600」も10月14日に発表されている。

Imagination Technologiesの最新プロセッサー「MIPS P5600」。同社のウェブサイトより抜粋

 「今さらMIPS?」という声もありそうだが、実はそう馬鹿にしたものでもない。直接CPUのネイティブ命令を発行することで性能を上げられる環境、つまりAndroid NDKを使ったARM向けアプリケーションは原理的に無理だが、ほとんどのアプリケーションはDalvikと呼ばれる仮想マシンの上で動作するため、CPUがARMだろうがMIPSだろうが問題はない。

 MIPSの場合、同じ性能レンジなら競合するARMコアと比較してより少ないダイサイズとより低い消費電力で実現できる、という点をセールスポイントにしており、実際中国のタブレット向けなどでは結構MIPSベースのSoCが存在している。

MIPS命令セットに独自のマルチメディア系命令を追加した中国産の64ビットマイクロプロセッサー「龍芯1号」

 また特定分野、例えばSTB(Set Top Box)向けでは早くからミドルウェアやアプリケーションの移植に力を入れてきており、こうした市場向けではメジャーな存在をまだ保っている。

他のOSの移植が可能
x86

 x86を採用すれば、Androidのみならず他のOSの移植も理論上は可能だ。最近は性能/消費電力比が大分改善されるとともに、絶対的な消費電力も下がってきているため、以前よりもスマートフォン/タブレット向けも現実的である。

 難点は、Soft IPもHard IPも事実上売られていないこと。大昔にALiが開発した486互換の古いコアに関しては、これを買収した台湾DM&Pから入手できる“らしい”が、それ以外のコアを入手する方法がない。

 AMDはJagure系列のコアを、インテルはQuark系列、というか将来のAtom系列のコアをSoft IPの形で出す可能性は否定していないが、現時点では存在していない。

 例外は、PS4やXbox One向けのAMDプロセッサー、あるいは大昔のインテルによる初代Xbox向けプロセッサーなどだが、これらは顧客にSoft IPの形でCPUコアを提供したのではなく、顧客の要求を元にAMDやインテルがカスタムプロセッサーを作ったので、今回の例にはそぐわない。

 したがって低価格向けを選択する場合は、MIPSという選択肢もあるが、そうでなければ事実上ARM一択ということになる。ちなみにスマートフォンやタブレット“以外”であれば、32bitコアに限定しても以下の選択肢がある。

  • LEON(SPARC v8互換)
  • PowerPC
  • BA25(CASTの提供する独自アーキテクチャー)
  • Coldfire(MC68000互換)
  • Xtensa(tensilicaの提供する独自VILW)

 8/16bitまで含めるとさらにその数は増えることになる。

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