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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第29回

待望の新iPad mini発売 不思議体験を経てラスベガスで入手まで

2013年11月21日 15時30分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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iPhoneやiPadの発売のたびに作られる
行列は誰のため?

 Apple Storeで新製品が発売されると、いち早く手に入れようとこぞって行列を作ります。iPhone 5s/iPhone 5cが発売された際、世界中で行列ができ、筆者も前述のバークレーのApple Store, 4th Streetで行列に加わり、その日の朝iPhone 5sを手に入れました(関連記事)。iPad mini Retinaディスプレイモデルもアップルは行列を作らせるんじゃないかと思っていました。

 ところが、今回はそうはしませんでした。オンラインでの販売で配送と店頭受取を選択させる手法であれば、店頭で行列を作る必然性がありません。すでに購入した人が店頭に受け取りに来るだけで、行列に並んで買えるかどうかをドキドキする必要もない。実に淡々としたものです。

 なぜ今回はそのようにしたのでしょうか?

 まず考えられるのは、iPad mini向けのRetinaディスプレイの製造の遅れから、用意できる製品の数が少なかったことがあったかもしれません。一部の報道では11月中に発売できないのでは? という話も書かれていたほどでした。それは結果として違っていましたが、行列を作らせて行き渡らせるほどの在庫を揃えられなかったことは考えられます。

 もう1つは、行列に並ぶことが、Apple製品を購入する人たちにとって幸せか? ということです。製品が欲しいから行列を作るのであって、行列を作ることが目的ではありません。iPhoneの場合、契約もあるのでその人が店頭に行くことはある程度必要な作業ともいえますが、必ずしも契約が伴わないiPad miniの場合、並ぶことより確実に製品が手に入ることが重要であるはずです。

 今回のやり方は、Walk-in(店頭に直接行く)の購入を希望する人にとっては少し手間でしたが、オンラインでの購入に統一したことで、iPad miniが手に入るかどうかは、朝どれだけ早く起き、寒空の下で待つ忍耐があるかどうかと無関係になりました。

 行列は確かにインパクトがありますし、発売された瞬間店内にハイテンションで迎え入れられるのもイベントとして楽しいものです。しかし本当に顧客が望むことに立ち返れば、別の方法もあり得るということでしょう。

iPad mini Retinaモデルで撮影した写真を、iPhotoで加工しているところ。あらゆる動作に引っかかりがなくスムーズで、非常に快適になっている。またディスプレイは特に文字の表示で非常に満足度の高い精細さが得られる

自宅に届いていたもう1台のiPad mini Retinaは
あっさりと店頭で返品が可能だった

 ということで、ラスベガスでiPad miniを手に入れ、翌日から軽快で快適、そして何よりきれいな文字で取材を進めることができました。ラスベガスから帰ってくると、家に届いていたもう1枚のiPad mini Retinaディスプレイモデル。これは返品することにしました。

 返品の手続きも簡単。オンラインの購入履歴から、商品をキャンセルすると、郵送だけでなくApple Storeの店頭への持ち込みでも、返品を受け付けてくれます。オンラインで買ったんだからオンラインで返品せよ、なんてことは言われません。

 バークレーのApple Storeへ行き、返品したい旨を告げ、商品の箱のバーコードを読み取って、筆者がオンラインで購入したことを確認すると、クレジットカードの返金のレシートをメールしてくれて終了。1分で済みました。

 Apple StoreはApple製品に触れて体験することができる場所であり、Genius Barでのサポートやパーソナルトレーニングなどの機能が充実した場所です。しかし今回、オンラインのApple Storeと高度に連携し、より多彩な販売方法やサポートを行うことができる仕組みになっていることを体験しました。

 日本では米国に比べまだまだ数が少ないですが、新しい買い物のスタイルを提案するApple Storeという場所の魅力に、より注目してみたい、と思うようになりました。何しろ、床面積あたりの販売額はトップですので。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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