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MOBURA成功の鍵は、雑草スタイル。

2013年11月16日 01時10分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

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 プラント建設などで知られるIHIは14日、藻類から燃料成分を安定的に抽出する屋外での実験に成功したと発表した。

 榎本藻という藻類を品種改良して屋外で安定的に培養し、2020年に航空機用に利用される燃料として大量生産するという目標に向けて第2のハードルをクリアしたと解説した。実際に屋外の試験場は写真で確認出来る通り、完全な屋外に吹きさらしの状態で設置されており、ゲリラ豪雨などの雨の混入に対しても特に対策を行っていない。言ってみれば「それぐらいの雑な環境でも育つ藻を作ることが出来た」ことが今回の大きな成果だと強調した。

MOBURA抽出の試験プラント。深さ20cmほどの水槽だ。

MOBURA抽出の試験プラント。深さ20cmほどの水槽だ。

 完璧な環境が用意できる室内や添加物を使う方法に比べて、太陽光のみで乾燥重量の50%も油分を含む藻を遺伝子操作ではなく品種改良のみで実現したことが今回の成果なのだ。藻と油から名付けられたMOBURA(モブラ)という名前を生産された油に名付けた。

言わば、研究室の無菌室ではなく外界の雑多な環境でも藻が雑草的に育つことが一番の目標であり、その部分がクリアできなければ大規模な油の生産プロジェクトは成功しない、という思いが有ったとネオモルガン研究所の藤田朋宏代表取締役社長は語った。数百ヘクタールの広大な土地で人手をかけることなく機械的なプロセスで藻から燃料を抽出することが出来れば、当面化石燃料の利用が続くと思われる航空機用燃料においても代替となる可能性が見えてくる。現段階の技術ではリッター当たり500円という生産コストが掛かる。これを安く早く生産することがこの研究の目標だ。

藻から抽出されたMOBURA。まだ色が付いたままの状態だ。

藻から抽出されたMOBURA。まだ色が付いたままの状態だ。

 理詰めで完璧を目指しがちな理工学部系の発想ではなく「私は農学部ですから、雑な環境でも作物が育つことを目指すんです。でないと機械化と大量生産が出来ません」と語った藤田社長のコメントが印象的だった。

IHIのプレスリリース:http://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2013/press/2013-11-14/index.html

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