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ゴム足だけでも30個のサンプル。小型化・薄型化に詰まった工夫とは?

ThinkPadの再設計とはネジ1本さえ再設計するということ

2013年11月14日 18時00分更新

文● 貝塚怜/ASCII.jp編集部

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つなぎ目が消え、すっきりした印象になったトップカバー。右はX230のもの

デザインから? それとも設計から?

—ネジ1本にもThinkPadのこだわりが詰まっているのですね。トップカバーはマグネシウムと樹脂の一体成型とうかがっていますが、綺麗に仕上げるのが難しかったのでは?

「その通りです。X230まではマグネシウムと樹脂の継ぎ目がわかるデザインだったのですが、今回のトップカバーはフラットなものにしたいと。しかし全面マグネシウムにしてしまうと、無線LAN通信に支障が出ます。そこでマグネシウムと樹脂をつなぎ合わせた状態で成型し、上から塗装をほどこすことで素材の差が分からないように仕上げました。初めは表面が波打ったものができてしまったり、継ぎ目が不自然に目立ってしまったりと大変でしたが、何とかきれいに仕上げることができました」

X240のトップカバーの裏面。樹脂とマグネシウムではっきり層が分かれている

こちらはX230のもの

ーデザインと、機構や内部構造といった設計の部分はどちらが先にあったのでしょう。

「企画にあたって、まず『シンプルとモダン(Simplified&Modernity)』というコンセプトがありました。デザインチームがコンセプトに則ったデザインを作成し、設計チームがデザインの可否や実現する方法を提案していく、あるいは代替案を打ち出していくという具合に進めていきました。なのでどちらが先かといえばデザインですが、デザインのための設計、設計のためのデザインといったところでしょうか。ただ、小型・薄型で高機能のモジュールやパーツを採用している分、LCDパネルなどハードの1つ1つにかかるコストが増え、設計にはあまりコストがかけられませんでした。“限られたコストの中で、優れたデザインと薄型化を実現するための設計”が重要だったのです」

ネジ穴やダクトのレイアウトが見直され、洗練されたボトムカバー

裏面。マグネシウム合金製のロールケージと、キーボード側から伸びるブラケットで補強している

ロールケージ単体。HDDの上にあたる部分はハニカム構造になっている

キーボードの下に取り付けられているポリ製のパーツ

—底面も非常にすっきりしました。少し詳しく教えてください。

「従来はベースカバーの上に蓋状の『ボトムカバー』が取り付けられていたのですが、今回はベースを丸ごと外せる『ビッグボトム構造』を採用しています。部品が1つ減った分、薄くできたというわけです。同時に、内部ハードへのアクセス性も向上しています。これまでは、交換するハードによって開ける部分が異なっていたのですが、ビッグボトム構造なら開ける場所が1つしかないので明確です。ネジのレイアウトや本数も見直しています。CS09世代のときは『必要な部分に必要なだけ開ける』といった感じで、我々としては、それはそれで気に入っていたのですが、今回はだいぶ数を減らしてすっきりさせました。キーボード側は、グラスファイバー入りの樹脂を内側からマグネシウムのパネル(ロールケージ)で補強する構造を採用して、コストも抑えています。キーボード部から金属製のブラケットでさらに補強しているので、堅牢性は十分に確保できました。また、ボトムカバーを外すと、それをシステム側で検知するようにもなっています。外していない場合は“ハードウェア構成の変更なし”とシステムが判断するため、起動時間が短縮できる仕組みです。この仕組みも『ユーザーエクスペリエンスの向上』に位置づけています」

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