ウェブを発明したティム・バーナーズ=リー博士が設立した、ウェブ技術の標準化推進団体「World Wide Web Consortium(W3C)」。東アジア地区担当ホストは慶応大学SFC研究所W3Cで、その指揮を執っているのが「日本のインターネットの父」村井純教授だ。
村井教授は、インターネット草創期に電子メールで日本語が通るように尽力したことで有名だが、今回の発表もウェブでの多様な日本語表現を実現させるためのもの。SFC研究所W3Cは欧州情報処理数学研究コンソーシアム(ERCIM)にウェブ技術の国際標準化の委託研究費用として450万円を支援する。日本とフランスの非英語圏の主要研究所が手を組むことで、英語圏では後回しにされがちな国際化研究を推進していくことになる。ERCIMは日本語特有の表現形式をCSSで実現するための研究を行い、これをもとにW3C国際規格勧告が発行されれば、日本語電子書籍、電子出版の発展が期待できる。
村井教授は「グローバル化したインターネット空間に、それぞれの国の文化やコミュニティを互いに尊敬、尊重して生かしていくプラットフォームを作ることにある」と今回の研究の目的を説明。「日常的に縦書きを利用している国は現状では日本が中心。縦書きという特殊な表現形式を守るのは日本の責任だ」と述べ「今後はウェブが電子書籍の中心となる。教科書の電子化も視野に入れ、そのプラットフォームとして真の国際標準を推進する必要がある」と重要性を強調した。
ちなみに日本以外の国で縦書きがあまり残っていない理由だが、「1910年代ごろ、中国では西洋の影響を受けて、当時の知識人の間で中国語を簡便にしようという流れが起こり、横書きの合理性が主張され、徐々に横書きが普及しはじめました。その後、中国共産党により公的に横書きとなりました。台湾も横書きが主流ですが、最近ではDTPの普及で文字レイアウトの自由度が高まったため、出版物の中で縦書き表記もあちこちで見られるようになったという話もあります」(株式会社KADOKAWA 角川学芸出版 辞書編集室 坂倉基氏)
ERCIMのダーディラー氏によれば、日本特有の表現を含めた国際標準化は2014年の夏にリリースされる予定のHTML5に反映され、その後、HTML5.1で韓国語や中国語などにも順次適用されていくという。