ジュニパーネットワークスは10月30日、地理的に分散した複数のデータセンター(DC)間、および物理/仮想ネットワーク間の相互接続と統合管理を目標とした新しいアーキテクチャ「MetaFabric」と、それを構成するソフトウェアやスイッチ、ルーターの新製品/機能強化を発表した。
MetaFabricは、「オープン」「シンプル」「スマート」という3つの指針に基づいて構想された新たなアーキテクチャ。企業が利用するオンプレミス/マネージドサービス/ホステッドサービス/クラウドサービスのDC間、および物理/仮想ネットワーク間をシームレスにつなぎ、統合管理を可能にすることで、データセンターの複雑性を排除して迅速性を提供する。
MetaFabricはスイッチング、ルーティング、オーケストレーション、SDN(Software-Defined Network)、セキュリティソリューションを構成要素とする、包括的なポートフォリオを通じて提供される。またヴイエムウェアなど、他のベンダー製品との相互運用性の向上を目的とした技術パートナーシップの推進も含まれている。
今回、MetaFabricの発表に合わせて、DCアクセススイッチの新製品「QFX5100」ファミリーと、「MXシリーズ」ルーターや管理/分析ツール「Junos Space Network Director」、SDNコントローラー「Contrail」の機能強化、さらにMetaFabricの導入支援サービスがリリースされている。
MetaFabricを基盤とするQFX5100ファミリーは、10GbE/40GbE(ギガビットEthernet)に対応し、MPLS、BGP Add-Path、L3VPN、FCoEサポートなど豊富なレイヤー2/3機能を提供するトップオブラック(TOR)スイッチ。オープンインタフェースを備えており、ジュニパーのバーチャルシャーシや「QFabric」アーキテクチャだけでなくあらゆるファブリックアーキテクチャに対応する。また、サービス中断なしでソフトウェアをアップグレードできる「TISSU(トポロジー非依存型インサービスソフトウェアアップグレード)」機能を備えており、高可用性を実現する。従来機比でパフォーマンスや収容密度も向上した。
MXシリーズルーターでは、アップデートによって、異なる方式のSDNおよび物理ネットワーク間をブリッジ/ルーティングする「ユニバーサルSDNゲートウェイ」機能が追加される。また複数DC間を効率的に接続するEthernet VPN(EVPN)を新たにサポートした。
Junos Space Network Directorでは、ファブリックのビジュアライザ(可視化機能)を備え、DC全体の物理/仮想要素を単一のコンソール上で把握できるようになった。またAPIを通じてVMware、IBM、OpenStack、CloudStackなどのオーケストレーターや管理製品に対応している。SDNコントローラーのContrail(関連記事)では、ヴイエムウェアのハイパーバイザー「VMware ESXi」を新たにサポートすることが発表されている(2014年対応予定)。
ジュニパーでは今後、他社製品との相互接続性検証を進め、検証済みのリファレンスアーキテクチャを提供していく方針。また顧客の導入を支援するプロフェッショナルサービスの提供開始も発表している。
発表会に出席したジュニパー日本法人の代表取締役社長、ジェフリー・ブラウン氏は、MetaFabricの狙いについて次のように説明した。
「今日のアプリケーションは、オンプレミス、ホステッド、マネージド、あるいはクラウドと、さまざまな形態がとられる。それにより生じるアーキテクチャの複雑性を排除するのがMetaFabricだ。混在する物理的、仮想的な要素を1つのファブリックにまとめなおして、DC全体を1つのビューで可視化し、あらゆる要素の状態を同じように把握可能にする」(ブラウン氏)
また米ジュニパーのCEO、ケビン・ジョンソン(Kevin Johnson)氏は、ジュニパーではパフォーマンスと俊敏性の「両立」にフォーカスしていると現在の戦略を説明した。
「サービスプロバイダーも企業のCIOも俊敏性、スピードを新しいテーマとして重要視するようになった。しかし顧客はパフォーマンスか俊敏性か、どちらかしかとれないのが現状。ジュニパーは“OR”ではなく“AND”のパワーを持っている。両方のニーズに応えようとしている」(ジョンソン氏)
そのうえでジョンソン氏は、高いパフォーマンスを提供するハードウェア(カスタムシリコン)、柔軟性を実現するソフトウェアの両面で、イノベーションへの投資を継続していくと強調した。
