iPad AirはiPad miniの進化形だ
iPad Airは、なぜこんなにも、従来のiPadと違うのか? それがアップルのもの作りの面白いところかもしれない。
アップルでは厳選したラインアップの製品を1個1個丁寧かつ大事に作り、売った後も、その製品への評価や評判に耳を傾け続ける。このレビュー記事も、おそらく読者のみなさんだけでなく、カリフォルニアのアップル本社の重役達も翻訳されたものを読んでいるはずで、それくらいひとつひとつの製品に気を配っているのだ。
昨年、iPadには、iPad miniというとんでもなく人気の弟分が現れた。この弟分は、ほとんど持つところがないくらいまで薄くなった本体フレームや、そのエッジを際立たせるダイアモンドカット、セクシーな色の付いた背面パネルなど、製品のデザインという意味でも、これまでのiPadより大胆に進化していた。
兄貴分の旧iPadを持っている人は、大きな画面と先進性能を手にしつつも、正直、軽さや製品デザインに妬いていた部分があると思う。
そして、ここからがアップルの面白いところで、ある製品で秀でた成果を得られると、その長所をさらにうまく活用して、他の製品にも織り込んでくるのだ。
iPad Airはまさにそんな製品で、画面のサイズこそ旧iPadと同じだが、それ以外の製品デザインなどは、むしろiPad miniに近い。
これは本体のデザインだけではない。iPad 2以降では、スマートカバー、スマートケースといったアップル純正アクセサリーも本体と同時にデザインが行なわれているが、旧iPad用の折り目が4つあるのに対して、iPad Air用ではカバーの端をマグネットでとめるiPad miniと同じ折り目3つの形態としている。
これは、本体が軽くなったおかげで3つの折り目でも安定するようになった点と、本体の横幅が狭まり画面の下部になる側がテーブル面に近くなったこともあり、立てて使う時、もう少し本体を上向きに傾斜したほうがよくなったといった考えもあったのだろう。
ちなみに新しいスマートカバーはすべてポリウレタン製になったが、一方で背面まで守ってくれるスマートケースはすべてレザー(革)製になり、一気に高級感が増した。革であるにも関わらず、スピーカーグリル部分などは1個1個丁寧にドリルで穴を開けているあたり、革製品好きにはたまらない魅力を放っている。
「正しすぎる」進化—もはや過去の製品には戻れない
「『正しい進化』とは何か?」と問われた時、ひとつの基準となるのは、それに触れてしまうと「もはや過去の製品には戻れない」と思わせるかどうかだ。
その意味でiPad Airは、「正しすぎる」変化と強調したくなるほどの進化を遂げている。
iPadという、世界に衝撃を与えた製品が、このiPad Airの登場で、再びデビュー当初と同じセクシーさと輝きを放ち始めた。
iPadに「似たモノ」として分類される「タブレット」の市場は、iPad Airによって再編されてしまうだろう。スペックだけを見ると他社も追いついてきたように見えたが、今回、このクラスで世界最軽量、それでいてアップルらしい魅力を備えたiPad Airが大きく突き放した。「似たモノ」市場は風穴を開けられてシャッフルされ、売れ筋の小型軽量製品iPad miniと並ぶ存在として、iPad Airの9.7インチという大画面に改めて注目が集まってくるのかもしれない。