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日本に必要なのは「スーパーソーシング」。オープンソースとインナーソースのハイブリッドこそ日本に最適

2013年10月28日 01時39分更新

文● 松下 康之/アスキークラウド

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 ブラック・ダック・ソフトウェア株式会社(以下、ブラックダック)のアメリカ本社でチーフマーケティングオフィサーを務めるフィルグラノフ氏(Phil Granof)はオープンソースソフトウェア最新動向を解説するセミナーの開催に際しアスキークラウドのインタビューに応え、「日本は世界で一番クリエイティブな国。だからこそオープンソースソフトウェアとコミュニティが鍵になる」と説明した。

 グラノフ氏は2013年6月にブラックダックにチーフマーケティングオフィサーとして参画、これまでのブランディングコンサルタントの経験を活かし、オープンソースソフトウェアの活用に関して啓蒙を行っている。今回のセミナーでは、これまでの自社のサービスの説明ではなく、如何にオープンソースソフトウェアが企業活動にとって必要なのか?を約80名の参加者にプレゼンテーションを行った。

 「Open and Sharing」と題されたプレゼンテーションでは、「Software is eating the world」というマーク・アンドリーセンの言葉を引き、ソフトウェアがすべての業界にとって重要な意味を持っていることを説明した。特にスマートフォンのOSが数多くのオープンソースソフトウェアで構成され、最近では家電製品においてもオープンソースソフトウェアの利用が進んでいることを例として示した。またオープンであることと同時に「共有する」こと、コミュニティの存在が重要であることを強調し、企業における「クリエイティビティ」がプロプライエタリ・ソフトウェアでは実現し得ないと強調。その中で如何に社内のリソースとコミュニティをうまく活用するか?が企業においてオープンソースソフトウェアを活用する重要なポイントであると説明した。

Mark Andreessenの言葉を引用。

Mark Andreessenの言葉を引用。

 セミナーでの質疑応答の中で最近、オラクルが発表した米国国防総省(DoD)に対するオープンソースソフトウェアに対するホワイトペーパー(オープンソースソフトウェアは信頼性に欠け、コストが高いというレポート)に対する報道(以下参照)に対して、グラノフ氏は、「オラクルの意図はシンプルだ。彼らは商用ソフトウェアをもっと買わせたいだけ。しかしコミュニティが存在することでオープンソースソフトウェアの優位点は揺らがない」と回答。

News Flash: Oracle Still Hates Open Source Software http://readwrite.com/2013/10/15/oracle-opens-both-barrels-on-open-source-software-in-military-whitepaper

 その後のインタビューでグラノフ氏はオープンソースソフトウェアの優位性を人材の確保に関する視点で解説した。「過去の企業内の情報システムは企業内のエンジニアによって開発維持されてきたが、その形態で革新的かつ高品質なソフトウェアを素早く開発することは不可能。オープンソースソフトウェアを開発するコミュニティを活用することが必要だ」と述べた。特に社内のエンジニアがオープンソースのコミュニティと連携して、オープンなソフトウェアを開発した事例を挙げ、「今後はオープンソースと社内のエンジニアたちの社内リソース(インナーソース)をハイブリッドさせた『スーパーソース』が求められる。この『スーパーソース』は私が考えた造語だけどね」とジョークを交えて説明。

 社内のエンジニアがいきなり外部のエンジニアと連携してソフトウェアを開発するのは、組織の壁が強い日本企業には難しいのでは?と質問を向けると「確かに家族のような組織にいきなり他人が入ってきたら、混乱するだろうね。ただ、あなたが夕食に友人を招待するように企業にとって信用出来る人を招くのは起こり得るだろう?そのために誰が信用出来る友人なのか?を知ることが大切。コミュニティとの接点はそのためにも重要だ」と述べた。

 グラノフ氏はかつてイタリアでルネッサンスが起こったことを例に挙げ「あの時期にあの場所でルネッサンスが起こったことを考えるとクリエイティビティというのはソーシャルな環境で起こり得るということがわかる。つまり企業に最も大切なことと多くのCEOが考える『クリエイティビティ』を発揮させるには人間が組織の内外で触れ合うこと、そして環境が守られ安全であることが必要なのだ。安全にオープンソースソフトウェアを使うという観点で、ブラックダックが提案しているGPLライセンスなどのコンプライアンスを守ってオープンソースソフトウェアを利用することを検証するソリューションには大きな意味がある。そして世界最大のオープンソースソフトウェアのディレクトリがコミュニティでの開発を促進するという意味では重要になってくる」と述べた。

 今後は、単なるサービスの機能紹介ではなく「CEO、CIOの人たちにコミュニティによるソフトウェア開発とその意義、エンジニアのリソース不足への回答としてのスーパーソーシングの利点などオープンソースソフトウェア利用の啓蒙を行っていきたい」と述べた。

ブラックダックのCMO、フィル・グラノフ氏。肩に乗せているのはブラックダックのキャラ、黒いアヒルだ。

ブラックダックのCMO、フィル・グラノフ氏。肩に乗せているのはブラックダックのキャラ、黒いアヒルだ。

参考サイト:

ブラックダックソフトウェア:http://www.blackducksoftware.jp

オープンソースソフトウェアディレクトリ・コミュニティサイト:http://www.ohloh.net

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