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NTT Comが描くクラウドとグローバルITの現実解 第1回

「NTT Communications Forum 2013」基調講演レポート

アグレッシブに前進するNTT Comの「Global Cloud Vision」

2013年10月25日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2つのクラウドサービスも大幅に強化

 クラウドサービスは、プライベートクラウドまで見据えた高信頼な「Bizホスティング Enterprise Cloud」と安価なパブリッククラウド「Bizホスティング Cloud n」の2枚看板で展開している。

 「グローバルで同じ品質のサービスを使いたいという要望で作った」(有馬氏)という主力商品のBizホスティング Enterprise Cloudでは、新たにドイツ、中国(上海)を追加し、拠点を10カ国/地域、12拠点に拡大。また、23日付でOracleやMicrosoft SQL Serverなどのクラスター型DB用サーバーやフラッシュを用いた超高速なブロックストレージのほか、SAP認定のVMを提供するLargeタイプなどを強化。これにより基幹系システムのクラウド利用を促進するという

 来年も、ネットワークやバックアップ、APIなど機能拡充が目白押しになっている。仮想ネットワークを用いたクラウドとコロケーションのハイブリッドサービスのほか、「異なるデータセンターをあたかも1つのデータセンターのように扱える『仮想データセンター構想』もある」(有馬氏)とのことで、クラウドサービスの分野でも“点”から“面”への展開を積極的に行なっていくようだ。

Bizホスティング Enterprise Cloudの機能拡充

 Bizホスティング Cloud nに関しては、2014年にはAPACの拠点を展開するほか、2013年10月以降に「VPC(Virtual Private Cloud)タイプ」を追加。インターネットと閉域網を使った2つのメニューが用意され、複雑なWebシステムやイントラ系のシステムにも対応できるようになった。

 両サービスの機能が拡充され、グローバル展開が進んでくると、当然ながら棲み分けは?という疑問も出てくるが、現状はあまり意識されていないようだ。将来的は不透明だが、現状はそれぞれのサービスにきちんとチャレンジを盛り込み、顧客のニーズに応えようというのがクラウドサービスの戦略といえる。

ネットワーク仮想化やNFVなども積極的に

 グローバルクラウドの足回りといえるネットワークサービス「Arcstar Universal One」もアグレッシブな拡張が施される。クラウドへの接続料が無料、拠点ごとにL2/L3を選択可能、バックアップ回線を標準装備、品質にあわせて選択可能なプランなどユニークな特徴を持つArcstar Universal Oneだが、従来のベストエフォート型に加え、新たにギャランティ型が追加される。帯域保証が提供されることで、基幹システムへの対応がより容易になるという。

 また、2014年3月には新開発のゲートウェイを導入し、クラウドとネットワークの接続を自動化する。これまで手動で10日程度要していた作業が大幅にスピードアップされるという。さらに既存の物理ネットワーク構成を変更せず、セキュアな通信を実現する仮想ネットワークのオーバーレイ機能を追加する予定。専用アダプターやソフトウェアを導入することで、他社VPNやインターネット接続された拠点を含め、仮想ネットワークにつなぎこむことができる。あわせてWAN高速化装置やファイアウォールなど仮想アプライアンスとして提供するいわゆるNFV(Network Fuctions Virtualization)にも対応し、ネットワーク構築の柔軟性が格段に向上する。

ギャランティ型のネットワークを追加

仮想ネットワークのオーバーレイ機能

 テクノロジー面でクラウド事業者に後れをとることの多い通信事業者向けのクラウドだが、NTTコミュニケーションズに関しては必ずしも当てはまらない。特にネットワーク仮想化の分野に関しては、グローバルで見ても先進的であることは間違いない。まさに通信事業者ならではのクラウドを体現している。

運用管理やサービスも「グローバルで統合」

 その他、有馬氏はクラウドマイグレーション、汎用アプリケーション、マネージドセキュリティ、運用管理などの分野でも新しい取り組みを紹介した。その内容は多岐に渡るが、テーマは「グローバルでの統合」ということになりそうだ。

 セキュリティの分野では、セキュリティ専門の子会社であるドイツのIntegralisグループを、随時NTT Com Securityに社名変更。独自のログ分析を行なうセキュリティ運用基盤と専門の分析官を擁する同社のマネージドセキュリティサービスに「WideAngle」というグローバルブランドを導入した。WideAngleでは一次窓口対応から高度なセキュリティ分析を必要とする運用監視までを約200名体制の「GROC(Global Risk Operation Center)」で実施することで、巧妙化するサイバー攻撃のリスクを最小化するという。

WideAngleのマネージドセキュリティサービス

 また、運用管理の分野でもグローバル向けサービスが導入される。ITILに準拠したこの運用管理サービスには新たに「Global Management One」というブランドが冠され、2014年には「グローバルサービスデスク」が提供される。

 ここでは障害検知や障害連絡、復旧対応、復旧連絡などのオペレーションが原則自動化。必要な時に傘下のEMIRIO、Atlas、DTS Group、netmagicなどのエンジニアチームがハイレベルな対応を行なうという二段構えになるようだ。もちろんメニューもグローバルで統一され、ネットワーク、データセンター、データ、アプリケーション/プラットフォーム、オンプレミス、端末、ヘルプデスク、セキュリティなどの管理はもちろん、ITガバナンスやコンサルティングなど高度なサービスまでグローバルで統一して提供される。

運用管理もグローバル向けの統合サービスとなる

 そして、統合という観点の極めつけとなるのは、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、アプリケーションなど、あらゆるサービスをまたいだポータルの提供だ。本日付で発表された「NTTコミュニケーションズ ビジネスポータル」では、マトリクスを使った強固な認証でサインインすると、すべてのサービスの提供状況や故障情報をダッシュボードで確認できるというもの。また、そこから個別のサービスポータルにジャンプすることで、サービスの設定や変更まで一元的に行なえる。

各サービスを統合するNTTコミュニケーションズのビジネスポータルが誕生

 このように短い時間内に多岐に渡るサービスの拡充を披露した有馬氏。基調講演後のプレスセミナーでは、前のめりなグローバル展開戦略について「積極的というより無謀といえるかもしれない」と笑いながら分析する。クラウドの成長を見越した「2015年度の売り上げ目標も変えるつもりはない」と言い切っており、今後もアグレッシブな挑戦が続くようだ。

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