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編集者の眼第47回

中国製模倣アプリは本物だけが生き残る

2013年10月22日 13時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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「リーン・スタートアップ」は、最小限の機能でサービスなどを公開し、顧客の反応を見ながら改修を繰り返していく手法のこと。この場合のleanは「ぜい肉がない」の意味で、ボトムアップで改善を繰り返すトヨタ生産方式を研究したMIT(マサチューセッツ工科大学)の学者が、トップダウン方式を採り入れて改良した「リーン生産方式」に由来している。

 アスキークラウドという7月に創刊した雑誌の編集長を兼務して以来、こちらのコラムを長く休載してしまった。今回リーン・スタートアップを取りあげたのは、アスキークラウドの提携誌MIT Technology Reviewの記事を翻訳しているとき(編集長なのに自分で翻訳している)、中国人にはリーン・スタートアップが向いている、という記述を見つけたからだ。

 中国といえばパクリ。チャットソフトの元祖ICQを公然とパクった「テンセントQQ」、アマゾンドットコムを後追いした「LightInTheBox」、eBayそっくりの「タオバオ」、CEO自身がスティーブ・ジョブズを真似るスマホメーカーの「シャオミ」。こうした北京のスタートアップ企業を育てたのが、マイクロソフトやグーグルの中国法人を立ち上げた台湾出身の実業家、李開復氏。10月24日発売のアスキークラウド12月号の小特集「『次のシリコンバレー』になる方法」内の記事「『次のシリコンバレー』最有力候補は北京」に、李氏の次のような言葉が出てくる


市場調査、最小限の機能、厳密な測定、迅速な反復といったリーンスタートアップモデルは、1人の強力な指導者の下で勤勉さ、熱心さ、集中力を発揮する中国人の性格とぴったり一致し、中国人の特性を最大限に活用できる

 MITが改良する前のオリジナルのトヨタ生産方式は、暗黙知を共有するチームによるボトムアップで生産ラインを改善していく、いかにもな日本方式。一方、李氏がマイクロソフトのビル・ゲイツ会長に指示されて開設したマイクロソフトリサーチアジアでは、自分の身は自分で守る式の米国由来の個人主義方式はうまく根付かず、1人の将官が10人の兵卒を指揮する方法に変えるとうまくいったそうだ。

 北京のスタートアップは、米国で生まれた新サービスを片っ端から模倣する。しかし、模倣だけでは6億人の利用者がいる世界最大のインターネット市場で生き残れない。グルーポン風のサイトは6500誕生し、生き残っているのは数社しかないという。偉い人はとことん偉い権威主義が残る中国で、トップダウンで命令が下り、製品を改良されては、いくらアメリカで最新のサービスが生まれても、市場規模で北京企業に改良の速度が追いつかない。中国では本物の模倣アプリだけが生き残り、米国の本家より多くの利用者を獲得する。さらに米国生まれのリーン・スタートアップで改良が進めば、やがて品質でも本家を追い抜いてしまうかもしれない恐ろしさがある。実際、テンセントQQはいまや本家ICQより元気がいいし、LightInTheBoxは中国価格を全世界同一サイトで提供し、アマゾンを脅かしている。タオバオは罰金の支払いまで可能で、すっかり中国のインフラと化し、シャオミのCEOは億万長者だ。

 そんな未来に対応するには、そもそもリーン・スタートアップとは何か、じっくり学びたい。アスキークラウド12月号の特集は「ゲームの魔力で顧客を夢中に 『没頭』ビジネスの正体」。私が翻訳したMIT Technology Reviewの「『次のシリコンバレー』になる方法」もぜひ読んで欲しい。

リーン・スタートアップで加速させるWebプロジェクト
~その戦術は本当に成功するのか?徹底検証~

日時
2013年11月12日(火)13:30~19:00
2013年11月19日(火)13:30~19:00
主催
株式会社ロフトワーク
会場
loftwork Lab(ロフトワーク渋谷10F)
東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア 10F
参加費
7,000円
対象
Web戦略や戦術の効果を検証したい方
Webプロジェクトの成果を向上させたい方
Webリニューアルやサイト改善をしたい方


※詳細は、ロフトワークのリーン・スタートアップで加速させるWebプロジェクトページで。

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