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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第225回

Intel Quark X1000が狙う新たな市場と、それを補うBay Trail-I

2013年10月21日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Quarkがサポートする
周辺機器

 さて、CPUコアはPentiumであるが、マイコン的な使い方をするとなると、周辺機器は一揃い統合しないといけない。これには以下の要件が必要になる。

  • 普通のケースでは外部にDRAMは接続しないので、内部で動作できるSRAMが必要
  • できればプログラム保存用のFlash Memory(NOR Flash)を内蔵したいところだが、難しければSPIなどを使って外部に接続

 「どんな周辺回路を統合するか」はもちろん製品ターゲット次第なので一概には言えないが、今回はIoT向けということでネットワーク接続は充実させる必要がある。

 その一方、通常のマイコンに必要とされるアナログ入出力(A/Dコンバーター、D/Aコンバーター、タイマーを連動させたPWMモジュール、コンパレーター、オペアンプなど)は必ずしもなくても構わないと割り切ったのであろう。

 ただ、完全にIOT向け「のみ」ではなく、ある程度汎用で使えるようにという色気が残った結果として、必要に応じて外部にDDR3 SDRAMを接続して、より大量のメモリーを必要とするアプリケーション(例えばOSを動かすなど)にも対応できるようにしたものと考えられる。

 下の画像がそのQuarkの内部構造である。Host Bridgeとあるのは、おそらく400MHz/32bit幅のInterconnectに、さらに割込みコントローラーやDMAコントローラーを統合したものになると思われる。

Quarkの内部構造。Quark X1000のHardware Reference Manualから抜粋。ちなみにここにはQuarkのCPUコアの内部も説明があり、どうみてもPentiumそのものであった

 よくあるI/Oに関しては、AMBA Fabric(おそらくAPB:Advanced Peripheral Busを使っているのだろう)にぶら下げており、一方8259や8254、APICなどはインテルの独自内部バスを使ってぶら下げている形だ。

 さてこのQuark X1000だが、実のところこの先どうなるかはよくわからない。この製品はインテルとしては初めての32bitマイコンであり、同社としては「これから市場を開拓する」ための尖兵とでも言うべき扱いである。

 逆に言えば、後継製品は当然このQuark X1000の顧客からのレスポンスを反映する必要があるわけで、そうしたレスポンスがある程度集まってくるまでは、次期製品がどうこう、長期のロードマップがどうこう、という話はインテル自身ができない状況であろうと想像される。

 コアはともかくSoC全体としてのダイサイズもかなり大きく、また2W近いTDPもマイコンとしてはかなり高すぎで、個人的には、現在の仕様のままではあまり競争力はなさそうに思える。一番無駄に感じるのがPCIe x1レーンであり、これを外すだけでTDPが1W位落ちそうだ。

Silvermontコア搭載のクライアント向けSoC
「Atom E3800」シリーズ

 そのX1000だけでは全部はカバーできないわけで、これと対を成すものとして発表されたのがBay Trail-Iこと「Atom E3800」シリーズである。

Bay Trail-Iこと「Atom E3800」シリーズ。相変わらずball数は多い。インテルの発表写真より抜粋

 これはすでに発表されているBay Trail-D/Mの組み込み向けという位置づけであるが、若干仕様が異なっている。コア数は1~4、動作周波数は1.33GHz~1.91GHzとかなり幅があり、TDPも5W~10Wの範囲である。またTurbo BoostはCPU/GPUともに無効になっている。全体的にTDPを下げるため、動作周波数を低めにしているのが特徴である。

Bay Trail-Iの構成概略

 もっともその分価格も下がっている。例えばBay Trail-TベースのCeleron J1850(4コア、CPU 2GHz/GPU 688~792MHz)がトレイ価格で82ドルなのに対し、同じく4コア構成のAtom E3845(CPU 1.91GHz/GPU 542MHz)は52ドルと30ドルほど価格が下げられており、こうした組み込み向けではある意味、コンシューマー向けよりもさらに価格競争が厳しいことがしのばれる。

 Quark X1000やAtom E3800がどう組み合わされるか、10月4日のインテルの発表(関連リンク)では、例えば空調機器などにはQuark X1000を搭載し、これが温度制御や温度測定を直接行なったり、あるいはすでに存在する温度制御部/温度測定部と連携するなどしながら、ゲートウェイどに搭載されたAtom E3800と通信。E3800は個々の空調機器からのデータをまとめたり、逆にこれらの機器に指示を出すといった集中管理を行なうといった事例を紹介していた。

 これまでこうした用途にインテルはXeonのローエンド製品を投入していたが、これをAtom E3800で代替するというのがインテルの大きなメッセージの1つ目、2つ目はこれまではゲートウェイどまりだったソリューションを、エンドデバイスまで拡大するというものである。

 これがうまく行くかどうか、はやはり最終的にはQuark X1000がどこまで受け入れられるか次第であろう。それもあってか、まだこれに続く明確なロードマップは出てきていないようだ。

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