Touch IDに見るiOSのこれから
Touch IDは、前述したハードウェアとiOS 7に用意されたフレームワークから成り立つ。9月18日に公開されMac App StoreからダウンロードできるXcode 5内部を調べると、それは「BiometricKit.framework」という名称で、いわゆるプライベートフレームワークとして用意されていた。
BiometricKit.framework内部のバイナリをfileコマンドで確認してみたところ、ファイル種別は「Mach-O 64-bit dynamically linked shared library」と判明した。現在のところiOSデバイスで64bit CPUを積むのはiPhone 5sだけであり、その意味で当然だ。
この結果からは、AppleにはTouch IDを32bit CPUのiOSデバイスで動かす予定がないことが分かるが、少し深読みすると「Touch IDは高い処理能力が必要」という背景も浮かび上がってくる。500ppiでスキャンした画像の情報量、指紋の照合にかける時間を可能なかぎり短縮しなければならない機能としての前提を考慮すると、うなずけるところだろう。
セキュリティに直結する機能である以上、サードパーティーに公開されないプライベートフレームワークであることは納得できるが、それはTouch ID対応のサードパーティー製アプリが登場しないことも意味する。インターネットバンキングなど、Touch IDの機能を利用すれば便利になりそうな場面は多いが、そういった機能は期待できない。
しかし、フレームワークとしてiOSに組み込まれている以上、Apple純正アプリに活用される場面は多くなりそうだ。ロック解除とApp Store/iTunes Storeの決済だけに利用され続けるとは考えにくく、いろいろな場面でTouch IDを活用しようと計画していても不思議はない。
たとえば、許可された人(指紋)でなければアプリを起動できない機能が追加されれば、子どもにiPhone/iPadを与えやすくなるはず。サードパーティーには無理でも、アプリ「Apple Store」ならばTouch IDで決済できる仕組みが追加されても納得できる。Appleの考え方次第だが、Touch IDの利用範囲拡大は意外に早いのではないだろうか。
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